告知なく川辺に咲けり小梔子
( こくちなく かわべにさけり こくちなし )
近辺の天気予報では、今日あたりから傘マークが続き、数日内に近畿地方でも梅雨入り宣言が発せられるのではないかと思う。また、最高気温も30℃を超える日が多く、蒸し暑さが日に日に増してきそうである。
そんなおり、近くの疏水沿いを散歩すると、岸辺に植えてある「小梔子(こくちなし)」がぽつぽつと花を咲かせていた。5月初めに咲いていた「姫空木(ひめうつぎ)」からバトンタッチされた感じである。
本日の掲句は、その様子を見て詠んだ句。さっと読むと「あっそう」で終わりそうだが、上五の「告知なく」と「小梔子(こくちなし)」を掛けた駄洒落の句でもある。「小梔子」は「梔子」の一種で夏の季語。
実のところ、ずっと以前に、同じような意図で以下の句を詠んでいる。
知らぬ間に花咲きてありコクチナシ
この句では、「告知なし」をあからさまに言うのでなく、「知らぬ間に」として、読者に後で気づいてもらうことを期待して詠んだ。
この方が上品な感じがするが、今回は駄洒落の句だとはっきりわかるように詠んだ。
ところで、こういう駄洒落の句や語呂合わせの句は、いろいろ思案していると時々思いつく。俳句は、文学だ、芸術だという人もいるが、時には肩から力を抜き、言葉の遊びとして楽しむのも良い。
因みに、これまで作った駄洒落の句は30句ほどあるが、その中で比較的ましと思われる句を以下にいくつか掲載した。どの句も一度ブログに掲載しているので、覚えておられる句もあるかも知れない。
【駄洒落の句】
沿道の烏野豌豆から雀
( えんどうの からすのえんどうから すずめ )
くすくすと風も笑うよ楠若葉
( くすくすと かぜもわらうよ くすわかば )
細枝にカリンカカリンカ花梨なる
( ほそえだに かりんかかりんか かりんなる )
メタセコイヤの裸木もまためちゃすごいや
( めたせこいやの はだかぎもまた めちゃすごいや)
朝寒やまだ起きざりしオキザリス
( あさざむや まだおきざりし おきざりす )
「小梔子」は、アカネ科クチナシ属の常緑低木で、原産地は、日本、台湾、中国など。普通の「梔子」が樹高1~2mになるのに対し、「小梔子」は樹高30cm~40cmぐらいと小型である。また、花も葉も小さい。
「小梔子」の多くは、写真のように八重咲きだが、一重咲きのものもある。開花時期は6月から7月で普通の「梔子」とほぼ同じ。全体的に小さいことから、別名で「姫梔子(ひめくちなし)」とも呼ばれている。
「梔子」を詠んだ句は非常に多いが、特に「小梔子」を詠んだ句は見つからなかったので、参考句の掲載は割愛する。