女の世界未だわからず姫女苑
( おんなのせかい いまだわからず ひめじょおん )


今日も昨日に続き最高気温が30℃を超え、一時35℃に達したそうだ。家の中で扇風機にあたっていると、さほどきつくは感じないが、外に出ると一気に汗が噴き出してくる。

ただ、そんな中でも盛んに花を咲かせている草花がある。名前は「姫女苑(ひめじょおん)」というが、名前が可憐であり、花も可愛らしい。



本日の掲句は、その名前からの連想により詠んだ句である。すなわち、その名前を仔細に見れば、「姫・女の世界」ということになる。現実にそういう世界が周りにもいくつかあり、男には未だ踏み込んではならない異世界のように思える。



ところで、「姫女苑」に似た花に「春紫苑(はるじおん)」がある。その識別の仕方については後述するとして、いつも思うことは、花を咲かす時期を言い合わせたように、うまくずらしていることである。



即ち、「春紫苑」の花期は4月中頃から5月初旬、一方「姫女苑」は5月中旬から8月。所により重なる部分もあるが、6月初めには完全に「姫女苑」に入れ替わる。何故そうなるのか分からないが、恐らく夏の暑さに耐える体質があるかないかの違いのせいだろう。

季語としては、「春紫苑」は春の季語だが、「姫女苑」は夏の季語に分類されている。



尚、「春紫苑」と「姫女苑」の識別の仕方は、開花時期の他に以下のものがある。


【春紫苑】
つぼみは下向きにちょっと垂れる。白い花の部分はやわらかな感じ。葉っぱは茎を抱くような形でつく。茎は中が空洞。


【姫女苑】
つぼみは上向きのことが多い。白い花の部分はピーンと張っている。葉っぱは茎からストレートに伸びる。茎には髄(ずい)が詰まっている。

*茎の断面 左:春紫苑 右:姫女苑

 

話は戻って、「姫女苑」関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 交代はダイナミックに姫女苑
② 姫女苑大き空き地を席巻す
③ わが背丈超えて群れ立つ姫女苑



 

①は、5月末頃から6月にかけて「春紫苑」から「姫女苑」に完全に入れ替わることを詠んだ句。花姿が非常によく似ているので、一般の人は、その変化に気づかないかもしれない。
②は、広い空き地を席巻(せっけん)するように群生している様子を見て詠んだ。その繁殖力は凄まじい。
③は、その「姫女苑」がいつもの散歩道の脇に群生しているのを見て詠んだ句である。草丈が日に日に伸びており、自分の背丈よりも高いものが散見された。



「姫女苑」は、キク科ムカシヨモギ属の一年草。北アメリカ原産で日本には江戸時代末期に渡来。花期は5月~8月と比較的長い。1個体あたり47000以上の種子を生産し、さらにその種子の寿命が35年と長いことなど、驚異的な繁殖能力を持っている。



「春紫苑」の名は、秋に咲く「紫苑」に似ていることに由来する。「姫女苑」の名は、「春紫苑」よりも花が小さいことから「姫」がつき、紛れを避けるために下は「紫苑」でなく「女苑」とした。(異説あり)ただし、一般には、「姫紫苑」と記されたりと一部に混乱が見られる。


「姫女苑」を詠んだ句は意外と少ない。今回は記事が長くなったこともあり、参考句の掲載は割愛する。