真っすぐに生きるは難し立葵
( まっすぐに いきるはかたし たちあおい )


今日取り上げる「立葵(たちあおい)」は、幼い頃住んでいた田舎では結構見られたが、現在住んでいる近辺では、あまり見かけない。

「立葵」は茎を真っすぐに伸ばし、下から大輪の花を順次咲かせていくが、長身のため風や雨に弱い。それ故に、育てる人も少なくなったのだろう。



それでも、外壁を囲むように「立葵」を植栽している家がある。近辺では、この一軒だけと思うが、今年も多くの花を咲かせていた。

本日の掲句は、その「立葵」を見て詠んだ句だが、真っすぐに生きることの難しさに思いを致して詠んだ。「立葵」は「花葵」「葵」ともいい夏の季語。



因みに、「立葵」については、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 日を仰ぎ立ちてこそあれ立葵
② 下半身先ずは華やぐ立葵
③ 雨風に耐えて上向く立葵




①は、「立葵はやはり日を仰ぎ真っすぐに立っているのが良い」と詠んだもの。
②は、下の方から咲き始め、半分ぐらいまで咲いている「立葵」を見て詠んだ句。
③は、「立葵」は風雨に弱いが、傾いても花を咲かせている様子を見て詠んだ句。



「立葵」は、アオイ科タチアオイ属の多年草。地中海沿岸などが原産。日本には、古くから薬用として日本に渡来。平安時代には「唐葵(からあおい)」と呼ばれ、江戸時代に今の「立葵」になったとのこと。



草丈は1~3mで茎は直立する。花期は6月~7月。花は一重の五弁花か八重咲き。花色は、赤・桃・黄・青紫など多彩。花径は大きいものは10cmくらいになり、茎の下から順に咲きのぼる。



尚、「葵」の名は、葉がどんどん太陽の方に向かうところから「あふひ」(仰日)の意でつけられたそうだ。また、梅雨入りの頃に咲き始め、梅雨明けと共に花期が終わることから、「梅雨葵(つゆあおい)」という別名もある。英名は「ホリーホック」。



余談だが、京都の賀茂神社が行う「葵祭」や徳川家の「葵の御紋」の「葵」は、「二葉葵(ふたばあおい)」という植物のことで、「立葵」とは全く別種のものである。

*二葉葵



「立葵」を詠んだ句は結構あるが、以下には比較的好むものをいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

【立葵の参考句】
湯をつかふ音が裏手に立葵 /鷲谷七菜子
にごりそむ港の空や立葵 /小原菁々子
兄弟の競ひて伸びる立葵 /藤田郁子
新しくつぎ足せし塀立葵 /上野泰
正面を四方にもちて立葵 /藤丹青