梅雨まぢか開花を急ぐ本紫陽花
( つゆまぢか かいかをいそぐ ほんあじさい )


ここ数日曇りがちで、昨日は雨が断続的に降った。昨年は近畿地方の梅雨入りが早く、5月29日(平年よりも8日早い)だったので、いよいよ梅雨入りかと思ったが、今週は晴れる日が多いので先送りになったようだ。



梅雨の時期に最も華やぐ花と言えば、言うまでもなく「紫陽花(あじさい)」だが、近辺を見渡すと満開になっているものものあれば、まだ五分咲きにもなっていないものもある。



本日の掲句は、そんな情景を見ながら詠んだ句である。「紫陽花」と「梅雨」が何となく示し合わせているような気がして詠んだ。下五は「額紫陽花(がくあじさい)」でも良いが、開花は「本紫陽花(ほんあじさい)」の方が少し遅れて咲く。
*「額紫陽花」と「本紫陽花」に違いについては後述。



因みに、「紫陽花」に関しては、過去に20句ほど詠んでいるが、以下には、雨との関連で詠んだ句をいくつか選んで再掲した。

【関連句】
① 紫陽花や今日もどんより雨模様
② 紫陽花やそぼふる雨に色づけり
③ 小糠雨降る裏通り濃紫陽花




①は、雨が降ったり止んだりの天候を恨めしく思いつつ、「紫陽花」がいきいき咲いているのを見て詠んだ句。
②は、「紫陽花」が雨に打たれ、生き生きと色づいてきている様子を詠んだ句である。「そぼふる」は、雨がしとしと降る様。
③は、小糠雨(こぬかあめ)の降る散歩道で、濃く色づいた紫陽花を見て詠んだ句。「濃紫陽花」は「こあじさい」と読む。



「紫陽花」は、アジサイ科アジサイ属の落葉低木で、大きくは、「額紫陽花」と「本紫陽花」の二つのタイプに分けられる。



この内の「額紫陽花」は日本原産で、花の外側に四弁の大きめの花=「装飾花(そうしょくか)が配され、その中央に小さい花=「真花(しんか)」を密集して咲かす。その形が、まるで「額縁」の中に咲く花のように見立てたのが名前の由来。
*装飾花:雄しべ・雌しべが退化し、花びらや萼(がく)が発達した花。 虫や動物を誘引することを目的とする。

*額紫陽花


一方「本紫陽花」は、日本の「額紫陽花」が西洋に渡り品種改良されて、「西洋紫陽花」として逆輸入されたもの。装飾花が球状の集合花を作るが、花の裏側を覗いて見ると、「真花」が時々見られる。まれに「装飾花」の中心に真花が見られることもある。
*「本紫陽花」には、「額紫陽花」から変化した日本原産のもの(原種)があり、それをシーボルトらが西洋に持ち帰り品種改良されたという説もある。
 
花期は、いずれも5月~7月だが、「額紫陽花」の方が幾分か早く咲く。


*本紫陽花の真花

 

和名の「あじさい」は、集まる様を意味する「集(あづ)」と青い花という意味の「真藍(さあい)」が結合して変化したものだと言われている。尚、漢字の「紫陽花」は中国の別の花を指すが、万葉の昔からこの漢字があてられているとのこと。

別名には、「四葩(よひら)」「八仙花(はっせんか)」「手毬花(てまりばな)」「刺繍花(ししゅうばな)」など多数ある。



 

「紫陽花」は、梅雨の時期に咲く代表的な花であり詠まれた句も非常に多く、これまで20句以上紹介してきた。今回は記事が長くなったこともあり、新たな参考句の掲載は割愛する。