小さき花湛えて笑まう楠若葉
( ちさきはな たたえてえまう くすわかば )


先週の土曜日は、3週間ぶりに京都の植物園に行ってきた。当日は最高気温が30℃を超える真夏日で陽ざしもきつく、まさに本格的な夏がやってきたという感じだった。



そんなおり、際立っていたのは木々の緑である。特に入口に続く「欅(けやき)並木」と正門から入ったところの「楠(くすのき)並木」は大きな緑のドームを形成していた。



本日の掲句は、その「楠」が小さな花を湛(たた)えながら、もっこりと繁茂している様子を「笑まう(えまう)」と表現して詠んだ句である。実のところ、後掲の過去に詠んだ句(関連句)を融合して詠んだもの。



尚、「若葉」は夏の季語の一つだが、「楠若葉」のように植物の固有名詞がついて季語になっているものもたくさんある。「柿若葉」「藤若葉」「蔦若葉」「椎(しい)若葉」「朴(ほう)若葉」など。



また、場所をつけ、「谷若葉」「山若葉」「里若葉」「庭若葉」「窓若葉」などと言ったり、気候などに合わせて、「若葉風」「若葉晴」「若葉時(季)」「若葉冷」「若葉闇」などと言い、いずれも夏の季語になっている。



因みに、「楠若葉」については、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① くすくすと風も笑うよ楠若葉
② 楠若葉つくるドームの闇深し
③ 小さき花浮かべてそよぐ楠若葉




①は、楠並木の若葉が風に吹かれているの見て詠んだ句。上五の「くすくすと」は語呂合わせで使った言葉だが、まさにそんな風情だった。
②は、京都の植物園にある「楠並木」が、細長いドームを形成し、その下に深い闇ができている様子を詠んだ。
③は、若葉の上に小さい花を咲かせながら、戦(そよ)ぐ様子を捉えて詠んだ。本日の掲句の元になった。



「楠は、クスノキ科ニッケイ属の常緑広葉樹。台湾、ベトナムなどの暖地に生息し、それらの地域から日本に進出したとされている。(史前帰化植物)

*「楠」は「樟」とも書く。

初夏に大量に落葉すると同時に緑の若葉が湧き立つように生えてくる。葉は革質で光沢があり、若葉の中でも独特な美しさがある。花期は5月から6月で、白く淡い黄緑色の小さな花を咲かすが、あまり見栄えがしない。



尚、「楠」は、日本の樹木の中で最も巨大で長寿を保つ。日本で一番大きな「楠」は、鹿児島県の蒲生八幡神社境内にそびえ立つ「大楠」で、樹齢約1,500年、根周り33.5メートル、目通り幹囲24.22メートル、高さ約30メートルあるそうだ。

名前については、全体的に特異な芳香を持つことから、「臭し(くすし)」が語源となったとする説、樟脳(しょうのう)を作る材料にもなるので、「薬(くすり)の木」が語源となったという説などがある。


「楠若葉(樟若葉)」を詠んだ句はままあるが、記事が長くなったので、参考句の掲載は割愛する。