ころころと転がるように小手毬が
( ころころと ころがるように こでまりが )


今日取り上げる「小手毬(こでまり)」も春の季語に属する花木である。いくつもの白い小花を付けるという点では、「雪柳(ゆきやなぎ)」に似ているが、花の付け方は大きく違う。


 

「雪柳」が枝に沿って小花を付けるのに対し、「小手毬」はいくつもの花が集まって毬のような集合花を作り、それが枝に並ぶ。俳句をやる前はよく間違えたが、今は間違えることはない。



本日の掲句は、その「小手毬」がある坂道の脇に植わっていて、いくつもの毬状の花が転がるように咲いているのを見て詠んだ句である。読んでの通り、語呂合わせを意識した。


 

語呂合わせといえば、かつて以下の句を詠んでいる。


小手毬の毬まるまると枝垂れたり

こちらの方は、「小手毬」の「毬(まり)」を意識した。


 

因みに、「小手毬」に関しては他にも以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 咲き満ちて小手毬描く放物線
② 小手毬や今は聞かれぬ手まり唄
③ 小手毬が転がる茶店準備中



 

①は、手毬のような花が、カメラで撮ったスロモーション映像のように、放物線を描いた枝に並んでいるのを見て詠んだ句。
②は、庭などでよく女の子が手毬を突きながら歌っていた「手まり唄」をついぞ聞くことがなくなったことを詠んだもの。
③は、ある喫茶店の前で白い花をいくつも咲かせているのを見て詠んだ句。店はまだ準備中だった。


 

「小手毬」は、バラ科シモツケ属の落葉性低木。中国原産で江戸時代に渡来したといわれている。花期は4月中旬から5月中旬。別名に「鈴懸(すずかけ)」「手毬花(てまりばな)」「団子花(だんごばな)」などがある。

属名の「シモツケ」は、「下野(しもつけ)」という花木からきており、同じような五弁の小花を咲かす。但し、色は薄紅色(ピンク)で蕊も飛び出ている。


*下野(しもつけ) (昨年6月撮影)


 

また、「小手毬」との対比で、「大手毬(おおでまり)」という花木があるが、これは、スイカズラ科カマズミ属の落葉性低木。花は「小手毬」や「紫陽花(あじさい)」と似ているが、全く異なる種類の植物である。

*大手毬 (昨年5月初め撮影)



「小手毬」を詠んだ句はままあり、以下にはその中から幾つか選んで掲載した。

*俳句では、ひらがなで詠まれることが多い。


【小手毬の参考句】
こでまりに端居の頃となりしかな /富安風生
こでまりにさす日まぶしみ夕疲れ /長谷川双魚
こでまりの枝より透けて遠筑波 /角川春樹
こでまりに雨降らば降れ濡るるべし /成瀬桜桃子
こでまりが風に弾んで誕生日 /池田文子