ポンポンと石楠花咲くや暮の春
( ぽんぽんと しゃくなげさくや くれのはる )


先の日曜日は、例により2週間ぶりに植物園に行ってきた。何故かこの日だけは最高気温が30℃を超えた。だからという訳ではないが、夏の花もかなり咲きだしていた。


 

その一つが、今日取り上げる「石楠花(しゃくなげ)」である。この花木は、「躑躅(つつじ)」の仲間だが、その咲き方に特徴があり、枝先に5~12個の花が集まって毬のように咲く。



そのことから、通常の「躑躅」とは別物として扱われ、夏の季語に分類されている。但し、咲き始めるのは4月初旬で5月中旬には散ってしまうものも多い。尚、通常の「躑躅」は春の季語。



本日の掲句は、その「石楠花」の花姿をチアリーダーが手に持つ「ポンポン」に喩えて詠んだ句である。
*ポンポン:先を丸くした房(玉房:たまぶさ)をフランス語でpomponと呼び、それから派生した外来語だと考えられている。



尚、既述の通り「石楠花」は夏の季語なので、下五に春の季語「暮の春(くれのはる)」をおいて春の句とした。「暮の春」とは、俳句の独特な言い方で春の終わりの頃、すなわち晩春を指す。対して「春の暮」というと春の夕暮れという意味になる。
*実際には、「暮の春」と「春の暮」を厳密に分けずに使われている。



因みに、「石楠花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 山盛りに石楠花咲くや疎水べり
② 石楠花の溌溂として登山口
③ 石楠花や散るも残るも入り乱れ




①は、毬のような「石楠花」が幾つも重なり合って、山盛りに咲いている様子を詠んだもの。
②は、ある登山口で、「石楠花」が花を咲かせているのを見て詠んだ句。「石楠花」は街中よりも登山道などの方が似合うような気がする。        
③は、植物園に「石楠花」が20本ほど植わっているエリアがあり、既に萎れたもの
、散ったもの、まだ花が多く残っているものが入り乱れている様子を詠んだ。



「石楠花」(石南花とも書く)は、ツツジ科ツツジ属シャクナゲ亜属の常緑広葉樹。原産地はネパールのヒマラヤなど。現在は、「西洋石楠花」が園芸品種として改良され、庭や公園にも植えられている。花色も、白、ピンク、赤、赤紫、黄色など多彩。

名前は、漢名の「石南花」を 「しゃくなんげ」と読み、その後少しずつ変化して「しゃくなげ」となったという説が有力。また漢名の「石南花」は「石の間に生え、南向きの土地で育ちやすいこと」に由来するとのこと。



「石楠花」「石南花」を詠んだ句は結構あるが、以下には、その中からいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

【石楠花の参考句】
石楠花に手を触れしめず霧通ふ /臼田亞浪
石楠花に谿流音をなせりけり /清崎敏郎
石南花にやさしかりけり朝の風 /駒走松恵
石南花の奥の院までつゞきをり /上田立一呂
石楠花に夕日さまよふまつりあと /伊藤いと子