一八や昭和は遠くなりにけり
( いちはつや しょうわはとおく なりにけり)


今日は「昭和の日」で国民の祝日。もともとは昭和天皇の誕生日だったが崩御された時、同天皇が植物に造詣が深く、自然をこよなく愛したことから「緑」にちなみ、1989年より「みどりの日」となった。

そして、2007年に「昭和」という名前を残そうという考えから「昭和の日」に改名された。また、「みどりの日」は5月4日に移動した。



詳しい経緯は割愛するが、その後、年号が「平成」「令和」となり、昭和もかなり遠のいた感じがする。掲句は、そんな思いから詠んだもの。この句は、俳句やっておられる方なら直ぐに気づくと思うが、明治の俳人である中村草田男(なかむらくさたお)氏の以下の句に倣ったものである。

降る雪や明治は遠くなりにけり



とはいっても、上五に何をおくかについては、いろいろと悩んだが、先日行った植物園でみた「一八」が何となく昭和の匂いがするので、とりあえずそれを使うことにした。*各人によって昭和のイメージはかなり異なると覆う。



ところで「一八」についてだが、この漢字を何と読むのか戸惑われた方もいるのではないだろうか。最近は「一初」と記述されることが多いが「いちはつ」と読む。「アヤメ」の仲間で最初に咲くということから付けられた。


 

ところが、何故だかわからないが、俳句では「一初」と表記された句はなく、そのほとんだが「一八」か、ひらがなの「いちはつ」である。その由来についてネット調べたが、明解な答えは見つからなかった。

尚、「一八」は、鳶の尾羽の凹みに似ていることから「鳶尾草(とびおくさ)」とも呼ばれ夏の季語になっている。



因みに、「一初」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。*以下の句では「一八」でなく敢えて「一初」表記している。


【関連句】
①一初のその髭もじゃが面白き
②一初や京の舞妓の憂い顔




①は、花の中央にかけて白色の髭状の襞があることに着目して詠んだ句。
②は、今から4年前に、京都の花街の「をどり」が自粛で中止になったことにかけて詠んだ句。


*白色いちはつ


「一初(一八)」は、アヤメ科アヤメ属の多年草。原産地は中国で室町時代に渡来し、観賞用として栽培されてきた。

花期は4月~5月。高さ30~50cmの花茎が立ち、分枝して2~3の花をつける。花は径10cmほどで色は藤紫色。基部から中央にかけて白色の髭状の襞がある。
*白花の「一初」もある。



既述の通り「一初」で詠まれた句はほとんどないが、「一八」「いちはつ」で詠まれた句はままあり、ネットで見つけた句をいくつか以下に掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

【一八、いちはつの参考句】
いちはつの一輪白し春の暮 /正岡子規
一八の花びら散りてより久し /高野素十
玄関に一八活けて大書院 /右城暮石
一八のむかうの影は古本屋 /岡井省二
一八はわれもわれもと咲く花ぞ /後藤比奈夫