芥子菜の黄花おおいし河川敷
( からしなの きばなおおいし かせんじき )
実のところ先週の土曜日、2週間ぶりに植物園に行ってきた。そこで見た植物については、今後順次取り上げるとして、今日は、その近くを流れる賀茂川(鴨川の上流)の様子が一変していたので、そのことを取り上げたい。
どう変わったかというと、河川敷に「西洋芥子菜(せいようからしな)」が群生し、その黄花が河川敷を覆うように、大量の花を咲かせていた。前回見た時は、まだ数株が花を付けていただけだったので、その変わりようには少々驚いた。
本日の掲句は、そのことを詠んだものである。「西洋芥子菜」は「芥子菜」の近縁種であり、「西洋」は省いて詠んだ。「芥子菜」は春の季語。
因みに、同じ景を見て、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 芥子菜の黄に染まりけり大河原
② 芥子菜の黄花揺れおる河の堰
③ 川風や芥子菜の花揺れ止まず
あまり変わり映えしないが、目の付け所が少しだけ違う。
在来種の「芥子菜」は、アブラナ科アブラナ属の一年草または二年草。原産地は中央アジアなど。日本への伝来は弥生時代ともいわれている。
一方、「西洋芥子菜」はヨーロッパ原産の「芥子菜」で、明治初期に油を取るため導入し栽培されたが、その後野生化。今は河原や野原で群生しているのをよく見かける。
花期は3月から4月。茎頂に黄色の十字状花を総状につける。茎・葉・種子に辛みがある。古くから食用として栽培され、葉茎は油炒めやおひたし、漬物などに利用される。また種子を粉末にしたものが香辛料の芥子として使用される。
余談だが、「芥子」という漢字には、「からし」の他に、「かいし」、「けし」という読み方がある。この内「かいし」は、「芥子菜」の種子のことで、「からし」はそれを粉末にしたもの。
問題は、全然種類が違う植物の「けし」にどうして当てられたのかである。一説では、「けし」は桃山時代に日本に渡来し、その種子がもともとあった「からし」に似ていることから「芥子」が転用、誤用されたと言われている。
区別するためか、俳句では「けし」に中国名の「罌粟」を使うことも多い。
「芥子菜」は、「芥菜」「辛子菜」「辛菜」とも書く。また、「からし菜」とかなで書くことも多い。以下にはネット見つけた句をいくつか参考まで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)
【芥子菜等の参考句】
芥子菜が咲く堤防の尽くるまで /上石哲男
芥子菜や川原へ降りる土手の道 /瀬島洒望
せせらぎの底に芥菜煌めけり /赤座典子
芥子菜の花盛りなる中州かな /萩原久代
からし菜や犬と少女の見え隠れ /吉田幸恵