多島美の見ゆる峠や躑躅咲く
( たとうびの みゆるとうげや つつじさく ) 


瀬戸内海ツアーの二日目の午前中は、「大三島(おおみしま)」にわたり、由緒ある「大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)」を参拝した。


 

その後、「因島(いんのしま)」に行き、村上水軍由来の定食を食べ、瀬戸内海の島々が一望できる展望台に登った。おりしも、その一帯には、早咲きの「三つ葉躑躅(みつばつつじ)」が鮮やかな紅紫色の花を咲かせていた。


 

本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句である。上五の「多島美(たとうび)」とは、瀬戸内海など内海に浮かぶ小さな島々とその海の美しさを称えた言葉。「躑躅」は春の季語。


 

尚、本ブログでは、主として「植物」を題材とした句を詠み、写真とともにその概要を説明している。その関係上、掲句は、敢えて瀬戸内海の景観と植物の取り合わせで詠んでみた。


 

因みに、「躑躅」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 薄日さす自粛の町に躑躅かな
② どこまでも続く街路の躑躅かな
③ 町中を躑躅が飾る四月尽



 

①は、三年前の4月末に詠んだ句。自粛、自粛と言われていた頃が今や遠い過去のように思えるが、その時でも例年通り「躑躅」の花が咲いていた。
②ば、京都市内の大通りの沿道に数十メートル連ねて植えてある「躑躅」が今が盛りと咲いている様子を詠んだ。
③は、いつも4月の末頃に「躑躅」が盛りを迎えるので、「四月尽(しがつじん)」との取り合わせで詠んだ句。「四月尽」とは、四月末日のこと。


 

「躑躅」は、ツツジ科ツツジ属の日本原産の植物。現在300種を超える園芸品種があると言われている。花期は4月~5月。漏斗型の花(先端が五裂している)を数個、枝先につける。


 

この内「三つ葉躑躅」は、山地や丘陵に生え、まわりの植物が芽吹く前に鮮やかな紅紫色の花を咲かせる。多くの種類があるが、枝先に3枚ずつ葉がつくことが共通の特徴である。


 

尚、漢字の「躑躅」は中国名を当てたもので、「ゆきつもどりつする」の意。毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足ぶみしてもがき、うずくまってしまったということでつけられたそうだ。

「躑躅」を詠んだ句は非常に多く、本ブログでもこれまで20句以上紹介してきた。今回は、記事が長くなったこともあり、参考句は割愛する。