純潔を守るは難し紫木蓮
( じゅんけつを まもるはかたし しもくれん )


「桜」の開花に前後して咲く花に「木蓮(もくれん)」がある。ご承知の方も多いと思うが、「木蓮」には大きく分けて、白い花の「白木蓮(はくもくれん)」と紫の花の「紫木蓮(しもくれん)」がある。

*単独で「木蓮」というと通常は「紫木蓮」をさす。


 

近辺の「白木蓮」は、3月初め頃からが咲きだしたが、カップ状の花が大きく開いたものや散ってしまったものが散見される。一方「紫木蓮」の方は、それよりも少し遅れて咲きだし、今もカップ状の花がかなり残っている。


 

それ故、今日はその「紫木蓮」を取り上げるが、真っ白な「白木蓮」とは違い、何か内に秘めているものがあるような感じがする。

恐らく花色の赤みのある濃い紫色がそんな印象をもたらすものと思うが、ある説によれば、動の赤と静の青、相反する色が共存しているため「高貴と下品」「神秘と不安」など二面性をもっているらしい。


 

本日の掲句は、ちょっと謎めいた印象の花を、今世間を騒がせていることに関連させて詠んだ句である。それが何なのかはここでは触れない。「紫木蓮」は春の季語。


 

尚、「純潔」という言葉は、最近ではあまり使われていないが、ネット辞書(コトバンク:精選版日本国語大辞典)で調べると、以下の意味が示されていた。

① けがれがなく清らかなこと。また、そのさま。純粋。
② 私欲や邪念がなく、心の潔白なこと。また、そのさま。
③ 異性との性的な交わりがなく、心やからだがけがれていないこと。また、そのさま。


 

因みに、「紫木蓮」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 塀越しにぽっぽっぽぽっと紫木蓮
② 紫木蓮うら地の白もあらわなり
③ 取り乱す姿また良し紫木蓮



 

①は、あるお宅の塀越しに花を咲かせている「紫木蓮」の花を見て詠んだ句である。その様子を「ぽっぽっぽぽっと」という擬態語を使って表現した。
②は、本来カップのように半開きで咲く「紫木蓮」が白い裏地(うらじ)をあらわにしている様子を見て詠んだ句。その色合いが何とも妖艶。
③は、カップ状の姿からほつれて花びらが大きく開いている様子を見て詠んだ句で、その印象を「取り乱す」と表現した。


 

「木蓮(紫木蓮)」は、モクレン科モクレン属の落葉中高木。原産地は中国南西部。古代に中国より渡来。花期は3月~5月。葉の出る前に枝先に花を上向きに半開する。花は外側が濃い赤紫色ないしは紅色、内側は白。花弁は6枚、がくは3枚。花が咲いてから散るまで3~4日。



 

「木蓮」「紫木蓮」を詠んだ句は結構ある。以下には、その中からいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

【木蓮、紫木蓮の参考句】
風止んで空うるみ出す紫木蓮 /岡本眸
池の面に起こるさざ波紫木蓮 /岡田有紀子
紫木蓮むかし住みたる家過る /石田邦子
手をかざし仰ぐや高き紫木蓮 /大橋晄
紫木蓮内なる白が暮れ残り /成田美代


*本記事は日時指定投稿です。現在遠出しており、コメント等への返信は 4月8日以降になります。ご了承ください。

*白木蓮