揃い踏み桜連翹雪柳
( そろいぶみ さくら れんぎょう ゆきやなぎ )


京都の東山の麓には、南北に疏水が流れていて、それに沿って「哲学の道」という散策路が整備されている。実のところ、先に取り上げた「桜」や「雪柳」は、この道沿いに植わっている花木だが、今それに加えて「連翹(れんぎょう)」が咲きだした。


 

例年のことながら、紅色の「桜」、白色」の「雪柳」、黄色の「連翹」が揃って咲く様は、この時期ならではのもので真に美しい。

本日の掲句は、まさに、そのことを詠んだ句である。「桜」「雪柳」「連翹」は全て春の季語であるが、句意からして季重なりとなるのはやむを得ない。


 

尚、上五の「揃い踏み」とは、「すぐれた人や物が勢ぞろいすること」を意味するが、元を正せば、大相撲で使われる用語に由来する。

すなわち、大相撲本場所の千秋楽、結びの三番前に、大関・関脇・小結にかなう力士がそろって土俵上で 四股 (しこ)を踏むことを「三役揃い踏み」というが、そこから転じて「勢ぞろい」の意で一般に使われるようになったとのこと。


 

ところで、「桜」「雪柳」に関しては、既に別記事で取り上げているので、以下では「連翹」に限って、その関連句、参考句や概要説明を加えたい。


 

まず、「連翹」について過去に詠んだ句としては以下のものがある。


【関連句】
① 連翹の花犇犇と犇めけり 
② 連翹の黄色が好きと幼子が
③ 幸福のハンカチのごと連翹黄 

*幸福(しあわせ)


 

①は、連翹が、枝の付け根から先までびっしりと花をつける様子を、「犇犇(ひしひし)」「犇めく(ひしめく)」で表現した句。
②は、連翹の花の写真を撮っていた時に、「わたし、黄色の花が大好き」と幼子が引率のお祖母さんに言っていたのを聞いて詠んだ句。
③は、山田洋次監督の映画「幸福の黄色いハンカチ(1977年公開)」のラストシーンに重ねて詠んだ句である。


 

「連翹」は、モクセイ科レンギョウ属の落葉低木で中国原産。日本への渡来は古く、平安時代初期と言われている。(異説あり)花期は3月~4月。葉が芽吹く前に2~3cmの黄色い4弁の花を枝一杯に咲かせる。


 

和名の「れんぎょう」は、漢名の「連翹」を音読みしたものだが、実は誤用されたもので、中国では「ともえそう」もしくは「おとぎりそう」のことをいうそうだ。古名は「いたちはぜ」、「いたちぐさ」。


 

「連翹」を詠んだ句は多く、これまで30句以上取り上げたが、以下には、その中から特に好むものをいくつか選んで再掲した。

【連翹の参考句】
連翹の一枝円を描きたり /高浜虚子
連翹や真間の里びと垣を結はず /水原秋櫻子
連翹や雨の堅田の蓮如みち /星野麥丘人
連翹に挨拶ほどの軽き風 /遠藤梧逸
連翹の迷ふことなき明るき黄 /後藤比奈夫