尽くされて尽くしきれずに土筆かな
( つくされて つくしきれずに つくしかな )


わが住処(すみか)は東山の麓で、近辺に銀閣寺や哲学の道などが所在する。従って観光客も多く、とりわけ今頃は外国人も非常に多い。そのお目当ていえば「桜」なのだが、残念ながらほとんど開花していない。


 

そんな中、近辺の疏水べりの一角に「土筆(つくし)」が生えているのが確認できた。幼き頃住んでいた田舎では簡単に見つけることができたが、近辺で生えている所は数か所しかない。


 

本日の掲句は、その「土筆」を見ながら一句と思い詠んだ句である。花の姿よりも、もっぱら「つくし」という名からの連想から「尽くす」という言葉が思い浮かび、語呂合わせも意識し詠んだもの。



これまでは、いろんな人に尽くされてきたが、逆に尽くしてきたことはあまりなかったなというのが句意。「土筆」は、「土筆ん坊(つくしんぼう、つくしんぼ)」「筆の花(ふでのはな)」ともいい春の季語になっている。



因みに、「土筆」「土筆ん坊(つくしんぼ)」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 萌え渋る土手ににょきにょき土筆ん坊
② 採り尽くし残る僅かな土筆かな
③ 玄関の狭き地べたにつくしんぼ




①は、まだ萌えきらない土手に、にょきによきと茎を伸ばしている「土筆」を見て詠んだ句。 
②は、春の山菜として人気が高い「土筆」も取り尽くされて、今は僅かしか残されていないことを詠んだもの。
③は、玄関前の狭い地べたに「土筆」が何本も生えているのに出くわして詠んだ句。多分この家の住人が田舎の野原を恋しく思い植えたのだろう。



「土筆」は、「杉菜(すぎな)」の「胞子茎(ほうしけい)」のこと。正規の植物名は「杉菜」で、トクサ科トクサ属のシダ植物多年草。日本に生育するトクサ類では最も小柄である。「土筆」が生えてくるのは3月~4月。

*木賊(とくさ) (昨年6月撮影)

 

「すぎな」という名は、地上部が杉を連想させ、春に「土筆」が食されることから、「杉の菜」の意で付けられた。一方、「つくし」は、「杉菜」に付いて出てくるから「付く子」、袴(鞘状の葉)の部分で継いでいるように見えることから「継く子」と呼ばれ転訛したという説が有力。

漢字の「土筆」は、土から出てきた胞子茎が伸びきる前は、先端まで「袴」に覆われており、その形状が「筆」に似ていることから当てられた。

杉菜 (昨年3月末に撮影)

 

「土筆」を詠んだ句は非常に多い。以下には、その中からいくつか選んで掲載した。

【土筆の参考句】
人来ねば土筆長けゆくばかりかな /水原秋桜子
土筆摘む土筆土筆とつぶやきて /宮津昭彦
まゝ事の飯もおさいも土筆かな /星野立子
詩碑と土筆大き静けさ海にあり /石原八束
膝つけばしめり居る草土筆嫡む /阿部みどり女