ムスカリがぽつりぽつりと疏水べり
( むすかりが ぽつりぽつりと そすいべり )


今日取り上げる「ムスカリ」は、明治初期に日本に渡来したそうだが、現在では、植物園や公園の花壇だけでなく、野生化して、野道や川端に群生しているのを時々見かける。


 

本日の掲句は、その「ムスカリ」が疏水べりに点在して、洋傘を半開きにしたような花を咲かせているのを見て詠んだ句である。

尚、「ムスカリ」は季語として認められていないが、掲句では春の季語に準じるものとして詠んでいる。
(春の季語としているところもあるそうだが確認できていない。)


 

中七の「ぽつりぽつり」は、「ムスカリ」の花が点々と咲いている様子を表現した擬態語(ぎたいご)だが、この句に相応しいかどうかは些か心もとない。


 

ところで、「擬態語」とは、状態や感情などの音を発しないものを字句で表現したものだが、動物の鳴き声や物が発する音を字句で表現したものを「擬音語」という。

そして、「擬態語」「擬音語」を総称して「擬声語」あるいは「オノマトペ(onomatopee)」」というそうだ。


 

実のところ、日本語には、これらが飛びぬけて多く4000~5000語あるそうだ。その理由に関しては諸説あり、ここでは論じきれないが、縄文時代からコミュニケーションのツールとして使われてきたといわれている。
*英語では1000~1500語、フランス語は600語程度だそうだ。


 

それでは、俳句の世界ではどうなのかというと、一つの表現技術として著名な俳人もよく使っている。例えば以下の通り。

梅が香にのつと日の出る山路かな /松尾芭蕉
春の海終日のたりのたりかな /与謝蕪村

*終日(ひねもす)
うまさうな雪がふうはりふはりかな /小林一茶


 

話は戻って、「ムスカリ」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 紫のムスカリ群るる田舎道
② ムスカリはおとぎの国の花らしき
③ ムスカリの小人の村はフェステバル  
 


 

①は、「ムスカリ」が、ある田舎道に群生しているのを見て詠んだ句。下五、中七の「紫のムスカリ群るる」は、語呂合わせを意識したもの。
②は、ムスカリが群生している様子を「おとぎの国」に譬えて詠んだ。花の色や形は、如何にも子供が好みそうな色合いである。
③は、②の句と同様、メルヘンチックな花のイメージから詠んだ句である。


 

「ムスカリ」は、ユリ科(分類体系によりヒヤシンス科)ムスカリ属の植物の総称。原産地は南西アジアあるいは地中海沿岸地方。花期は3月~5月。茎の先に青紫色のブドウの房のような花をつける。

名前は、ギリシャ語のムスク(moschos)=麝香(じゃこう)に由来。英名では「グレープヒヤシンス」といい、和名では「葡萄風信子(ぶどうひやしんす)」という。


「ムスカリ」は、まだ季語になっていないこともあり、俳句は、ほとんど詠まれていない。よって、参考句の掲載は割愛する。

 

*本記事は日時指定投稿です。現在遠出しており、コメント等への返信は3月20日以降になります。ご了承ください。