大地より噴き出すごとくクロッカス
( だいちより ふきだすごとく くろっかす )


先日行った植物園では、様々な春の花が咲き始めていたが、花壇のある一角では、「クロッカス」が多くの花を咲かせていた。


 

この植物は背が低く、地表に噴き出すように花を咲かせるが、今年も紫色、黄色、白色など多彩な花を咲かせ、春らしい雰囲気を醸し出していた。


 

本日の掲句は、その様子を詠んだ句。「クロッカス」は春の季語。


 

因みに、「クロッカス」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 紫も黄色も白もクロッカス
② 森蔭に花のスキップクロッカス
③ みそかすもぼろかすもなくクロッカス



 

①は、紫色、黄色、白色(薄紫)など様々な色の花が、かなり広い範囲で群生しているのを見て詠んだ句。花色をクロッカスのクロ(黒)にかけた戯れ句。
②は、森蔭で花が飛び飛びに咲いている様子を「スキップ」と表現し詠んだ句。また、「クロッカス」の促音「ッ」を意識した。
③は、クロッカスの名前の「カス」にかけて詠んだ戯れ句。テレビやネットで、酷い言葉が飛び交っているが、もう少しクロッカスのように品良くいかないものかと思って詠んでみた。


 

「クロッカス」は、アヤメ科クロッカス(サフラン)属の球根植物で、原産地は地中海沿岸から小アジア。日本には江戸時代に渡来。草丈は5~10cmほど。葉は松葉のように細い。

花期は2月初旬から4月。花色は黄、白、紫、複色など。丈夫な植物だが日光が足りないと花付きが極端に悪くなるとのこと。


 

クロッカスの名前はギリシア語のクロケ(糸)に由来し、糸のような細長いめしべを持つ種があることに因んでつけられたそうだ。


 

同じ仲間で晩秋に咲くサフラン(下写真)は、花を薬用やスパイスとして用いるが、クロッカスは観賞用のみに栽培される。そのため、「春サフラン」「花サフラン」とも呼ばれる。

*秋に咲く「サフラン」 *赤い雌蕊が摘まれ、スパイスや生薬に。


 

「クロッカス」が俳句に詠まれるようになったのは昭和に入ってからだそうだ。これまで、20句以上紹介したことがあるが、以下には、その中で特に好むものをいくつか選んで再掲した。

【クロッカスの参考句】
日が射してもうクロッカス咲く時分 /高野素十
クロッカス光を貯めて咲けりけり /草間時彦
忘れゐし地より湧く花クロッカス /手島靖一
公園のからくり時計クロッカス /曷川克
尖塔の空晴れわたりクロッカス /大木さつき