アカシアの本家本元ミモザ咲く
( あかしあの ほんけほんもと みもざさく )


春先に咲く花には黄色の花が比較的多く、今日取り上げる「ミモザ」もその一つ。今現在、近辺でもよく見かけるようになった。

この花には幾つかの特徴があり、花径が5mm程のポンポン状の小花が枝に連なって咲き、それが重なりあって枝垂れる。その光景は、いつ見ても華やかである。


 

ところで、この「ミモザ」は、もともと「アカシア」と呼ばれていたのだが、かつて西田佐知子が歌った「アカシアの雨がやむとき」に出てくるものとは全く違う花である。

歌に出てくる「アカシア」は、街路樹としても植えられている「ハリエンジュ(針槐)」のことで、それが明治初期に日本に渡来した時に誤用されてそう呼ばれた。



しかし、後に本来の「アカシア」である「ミモザ」が日本に渡来した時に間違いだと気づき、「ハリエンジュ」の方は「ニセ(偽)アカシア」に名前が変更された。
*学名「pseudoacacia」(ラテン語)を直訳した結果「ニセアカシア」と呼ばれるようになったという説もある。(pseudo=ニセの・疑似の+acacia=アカシア)

*針槐:ニセアカシアの花 ( 昨年4月末頃に撮影 )

 

ただ、そのことに気づいた時は、歌の方が有名になっており、本当の「アカシア」ではないという訳にはいかず、「ニセアカシア」は、その後も「アカシア」と呼称され続けた。

更に、石原裕次郎の「赤いハンカチ」、松任谷由実の「acaciaアカシア」などに出てくる「アカシア」も全て「ニセアカシア」。結局偽物が本物に完全にとって代わってしまった。



割を食ったのは本物の「アカシア」の方で、区別するために、「ミモザ」「銀葉アカシア」「ミモザアカシア」などと呼称されるようになった。

俳句の世界でも同様の混乱があり、今は、「銀葉アカシア」などの「アカシア」は「ミモザの花」「花ミモザ」として春の季語、「ニセアカシア=ハリエンジュ」は従前通り「アカシア」として夏の季語になっている。



前書きが長くなったが、本日の掲句は、そのことを知って詠んだ句である。偽物がいつしか本物にとって代わる。こんなことは人間界においてもありそうなことではあるが・・・。




因みに、「ミモザ」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 街角をくすぐるようにミモザ咲く
② 青空に陽気ころがし花ミモザ
③ 古家の屋根に耀う花ミモザ




①は、ミモザの花がふわふわとしたスポンジブラシのような感触があり、それを「くすぐる」と表現した。
②は、「ミモザ」の明るく陽気な花が、青空をバックに、ころがるように咲いているのを見て詠んだ句。
③は、「ミモザ」がある古い家の屋根越しに咲いているのを見て詠んだ句。

*耀う(かがよう):きらきら光って揺れる。



「ミモザ」こと「銀葉アカシア」は、マメ科アカシア属の常緑性小高木。原産地はオーストラリア。日本には明治末期に渡来。花期は3月~4月。

枝一杯に銀色がかった葉と黄色の丸い小花をつけ枝垂れるのが特徴。花の盛りの時期には樹全体が黄色に染まり、周囲の雰囲気を明るくしてくれる。


「ミモザ」を詠んだ句はままあるが、記事が長くなったので。参考句の掲載は割愛する。