雨上がり香りをためる沈丁花
(あめあがり かおりをためる じんちょうげ)


昨夜は少し雨が降ったようだが今朝は止んでいた。雨上がりの道は、汚れが洗い流された感じがし、何となく清々しい。そんな道を今日もゆっくり歩いたが、最近は様々な花が開花し始めている。



その一つが、今日取り上げる「沈丁花(じんちょうげ)」である。赤色の細い莟が綻(ほころ)び、白い小花が毬のような花を形成し、木全体を覆っている。



本日の掲句は、そんな小景を見て詠んだ句である。雨上がりの故か、花びらのような萼(がく)がしっとりとしていて香りをためている感じがした。「沈丁花」は「沈丁」ともいい春の季語。



尚、「沈丁花」は、夏の「梔子(くちなし)」、秋の「金木犀(きんもくせい)」とともに日本の三大香木(こうぼく)の一つにもなっている。これに冬の「蝋梅(ろうばい)」を加えて四大香木という場合もある。



因みに、「沈丁花」については、過去に10句以上詠んでいるが、以下には比較的気に入っているものを再掲した。
 

【関連句】
① 甘かおるブーケのごとく沈丁花  
② 花も香もはみ出しており沈丁花
③ マスクして香り嗅ぐなり沈丁花




①は、花の咲いた姿が小さいブーケ(花束)のようにも見え、それに香りを添えて詠んだ。*甘かおる(あまかおる)
②は、花が生垣や玄関先からぐっとはみ出して咲いている様子を詠んだもの。
③は、新型コロナの感染が始まった頃に詠んだ句。マスク着用があらゆるところで義務化された。



「沈丁花」は、ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木で「ちんちょうげ」とも言われている。原産地は中国南部からヒマラヤ。日本には室町時代中期以降に渡来。

雌雄異株で、雌株は直径1cmほどの赤い実をつける。日本にある木は、なぜかほとんどが雄株で実がなるのはまれだとのこと。(自分もまだ見たことがない。)



花期は2月末~4月。莟は赤紫色だが開いた花は白ないしは淡紅色。花弁に見えるものは萼で、先端が4裂して広がる。名前は、香木の沈香(じんこう)のような香りがあり、葉が丁子(ちょうじ)に似ていることから付けられたといわれている。



「沈丁花」「沈丁」を詠んだ句は多く、これまで、20句以上取り上げたが、今回はその中でも特に好むものを選んで再掲した。


【沈丁(花)の参考句】
古庭の古き匂ひや沈丁花 /正岡子規
沈丁の小枝小枝の花簪 /山口青邨
朝降りて昼とけし雪沈丁花 /細見綾子
ひしめきてまだ沈黙の沈丁花 /高浜年尾
まづ白が先手とばかり沈丁花 /石塚友二


*白花の沈丁花