大木や突風に揺れ榛の花
( たいぼくや とっぷうにゆれ はんのはな )


今日取り上げる「榛の木(はんのき)」については、見たことも聞いたこともないという人がほとんどではないだろうか。それを敢えて取り上げたのは、近くに樹高20mぐらいの大木があり多くの花を咲かせていたからである。



本日の掲句は、その花穂が突風に煽られ揺れている様子を見て詠んだ句。下五の「榛の花(はんのはな)」は、本来は「榛の木の花」というべきところを縮めたもので春の季語。「赤楊(はんのき)の花」とも書く。



尚、本句は嘱目(しょくもく)の句だが、深読みすれば、政治資金で揺れている某大政党の姿を映している句ともいえる。
*嘱目:作句において実景で目に触れた風物を写実的に作ること。



因みに、「榛の花」に関して、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① との曇る空にゆらゆら榛の花
② 薄日さす池畔に揺るる榛の花
③ ぶらぶらと行けばぶら~り榛の花




①は、曇り空をバックにゆらゆら揺れている「榛の花」を見て詠んだ句。「との曇る」の「との」は「一面に」あるいは「十分に」を意味する接頭語。 
②は、京都市北部にある「宝ヶ池」で詠んだ句。池畔には「榛の木」が何本か植わっていて、多くの花穂を垂らしていた。
③は、ぶら~り垂れている花を見て詠んだ句だが、語呂合わせを意識して上五に「ぶらぶらと」を使った。



「榛の木」は、カバノキ科ハンノキ属の落葉高木。原産地は、日本、朝鮮半島、中国東北部など。日本では全国の山野の低地や湿地、沼に自生する。樹高は15mから20mになる。



花期は12~3月頃。既述の通り雌雄同株で、雄花穂は黒褐色の円柱形で尾状に垂れ、雌花穂は楕円形で紅紫色を帯び雄花穂の下部につける。果実は松かさ状で10月頃熟す。



ところで、同じカバノキ科の植物でハシバミ属の「榛(はしばみ)」という落葉低木がある。花はよく似ているが、どんぐりのような実をつけることなどからある程度区別がつく。

 

しかし、この花も「榛の花」と表記し、「はしばみのはな」と読む。しかも季語になっており混乱することがあるので要注意。



「榛の花」を詠んだ句はままあり、以下にはネットで見つけた句をいつくか掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

【榛の花の参考句】
まなじりを流るる風の榛の花 /草間時彦
遍路にも昼はさびしき榛の花 /森澄雄
雪後の天息つめてをり榛の花 /篠田悌二郎
榛の花仰げばぎらと空ゆらぐ /川島彷徨子
跳箱の一列しろし榛の花 /鈴木鷹夫