なずな咲くペンペンペンと音立てて
( なずなさく ぺんぺんぺんと おとたてて )


今週の月曜日より、春に咲く野の花を取り上げてきたが、今日は、忘れてはならない「薺(なずな)」を取り上げたい。

*漢字が非常にややこしいので、以下では「なずな」と表記する。


 

「なずな」は、春の七草の一つで、田畑の畦地や野原などで普通に生えている。また,

町中でも街路樹が植えられている狭い地面に生えているのを時々見かける。


 

「なずな」の語源は「撫菜(なでな)」で、「撫でたいほどかわいい菜」という意味だそうだ。(異説あり)
*「撫子(なでしこ)」も「撫でたくなる子供のような花」という意味。

また、その実の形が、三味線の撥(ばち)に似ていることから、「三味線草(しゃみせんぐさ)」あるいは「ぺんぺん草」という異名が付けられている。


 

本日の掲句は、そのことに関連させて詠んだ句である。中七の「ペンペンペンと」はイメージ的なもので実際に音がなる訳ではない。

尚、「なずな}は春の七草の一つなので新年の季語になっているが、「薺の花」「ぺんぺん草」「三味線草」とすると春の季語になる。

 

因みに、「なずな」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 道の辺はペンペン草の宴かな
② 調子よくぺんぺん草とは愉快なり
③ 賑やかに三味線草と鼓草 



 

①は、ある散歩道で群生している「なずな」を見て詠んだ句。「ぺんぺん草」は既述の通り「なずな」の別称。
②は、①と同様「ペンペン草」の響きに愉快さを感じ詠んだ。
③は、「ナズナ」=「三味線草」と「タンポポ」=「鼓草」が街路樹の下で花を咲かせているのを見て詠んだ句。


 

「なずな(薺)」は、アブラナ科ナズナ属の越年草。原産地は中国で、ムギ栽培の伝来と共に日本に渡来した史前帰化植物だと言われている。

花期は2月~6月。4枚の白い花弁を持つ小さな花(直径3mmほど)を多数、花穂に付ける。花後に三味線のバチのような実がつける。


 

「ぺんぺん草も生えない」という慣用句があるが、これは、荒廃した場所で育つ「なずな」でも生育しない様子から、転じて何も残っていない状態、一切合財が残らない状態を揶揄した表現として用いられている。


 

「薺(なずな)」「三味線草」「ぺんぺん草」で詠まれた句は結構ある。以下にはネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

【なずな等の参考句】
ひとり旅三味線草を鳴らしゆく /青柳志解樹
訪づれに心はずみぬ三味線草 /阿部みどり女 
田はじめの遅れ薺の花ざかり /森田公司
昨日より今日新しき薺花 /細見綾子
雨の粒ぺんぺん草のペンペンに /辻桃子