雪被き赤き実覗く梅もどき
(ゆきかずき あかきみのぞく うめもどきき)


今朝は、近くの散歩道に薄っすらと雪が積もっていた。これくらいの雪であれば、あたり一面を白く塗り替え、清々しささえ感じる。大雪で大変な状況にある北日本、東日本の方々には申し訳ないが・・・。



本日の掲句は、近くにある古寺の池の畔に植わっている「梅擬(うめもどき)」が、雪を被(かず)き、その間から赤い実を覗かせているのを見て詠んだ句であある。
*被く(かずく):頭の上から覆う。頭に載せる。かぶる。

尚、「梅擬」は、晩秋に実を付けることから秋の季語になっているので、本句では、下五の「雪」を冬の季語とする。



「梅擬」の名前は、枝ぶりや葉が「梅」に似ていることから付けられた。「擬」には、優れた○○に匹敵するという意味合いもあるが、一見似ているが違うという意味がある。

*「擬」は「擬き」とも書く。

*晩秋の「梅擬」 … まだ葉がついている。

 

事のついでにいえば、「擬」が付く植物は、環境省のリストに73種挙げられているとのこと。その内「梅擬」がつくものは19種あるそうだ。

尚、「擬」は、最近では「にせもの」「パクリ」などと同じように使われることがあるので、あまり好ましいとはいえない。



因みに、「梅擬」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 枝ぶりの「ぶり」がいかにも梅もどき
② 落葉し池辺に紅き梅擬
③ 梅擬実も赤々と寒の池




①は、名前が梅の枝ぶりに似ていることから付けられたことを知り詠んだ句。「ぶり」は、その物事の状態やようす、ありかたなどを表す言葉。
②は、掲句と同じ場所で12月末に詠んだ句。この時は、冬の季語として「落葉」を上五においた。
③も、掲句と同じ場所で詠んだ句で、寒の時期に詠んだ。



「梅擬」は、モチノキ科モチノキ属の落葉低木。原産地は日本、中国。北海道を除く日本各地の山地に自生する。花期は5月~7月頃。薄紫の小さな花(3mmほど)を咲かせるが、あまり目立たない。

*雪が積もっていない時の「梅擬」


 

果実は9月頃から赤く熟し12月頃に落葉しても枝に残る。庭木、鉢植、盆栽、活け花に使われるが、鑑賞の対象は花より果実である。実が白色、黄色のものもある。



梅擬」を詠んだ句はままある。以下には、ネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。(過去に掲載したもの除く。)
 

【梅擬の参考句】
鵯の声去りてもゆらぐ梅もどき /水原秋桜子

*鵯(ひよ):「ひよどり」のこと
太箸や廂の空は梅もどき /波多野爽波
静かさや日に日に赤き梅もどき /良藤き代
工房や木曾の鳥来る梅擬 /肥田埜勝美
こめかみに風のあつまる梅もどき /篠崎圭介