天使のはしごかかる鳥居や寒の海
( てんしのはしご かかるとりいや かんのうみ )


ツアー三日目の午後は、愛知県知多郡南知多町の「つぶてヶ浦」を訪れた。海岸沿いには、大小様々な岩石が散らばっており、何層もの波が絶え間なく押し寄せていた。


 

この浦に関しては、対岸にある伊勢の神様たちが、石の遠投げを競った折、投げた石が「つぶてヶ浦」に落ちたという民話があり、パワースポットにもなっている。

*つぶて(飛礫・礫):小石を投げること。また、その小石。


 

実際には、この海岸は約1,500万年前の地層で、火山活動や海底地震が作りだした大津波のエネルギーが海底にあった大きな岩を、ここに運び込んだといわれている。


 

鳥居の方は、昭和7年に建立され、現在のものは3代目。伊勢神宮で20年毎に行われる御遷宮の際の古材を使用しているとのこと。


 

本日の掲句は、たまたま遠方に「天使の梯子(はしご)」が見えたので、それに掛けて詠んだもの。「天使」はキリスト教に由来するが、神道に由来する「鳥居」との取り合わせが面白いと思って詠んだみた。

季語を何にするか迷ったが、冬の季語として「寒の海」を下五においた。


 

【天使の梯子とは】
●気象用語では、「薄明光線(はくめいこうせん)」という。太陽が雲に隠れている時、雲の切れ間あるいは端から光が漏れ、光線の柱が放射状に地上へ降り注いで見える現象の俗称。「光芒(こうぼう)」「レンブラント光線」とも呼ぶ。


 

●「天使の梯子」という名称は、旧約聖書に由来し、ヤコブが夢の中で、雲の切れ間から差す光のような梯子が天から地上に伸び、そこを天使が上り下りしている光景を見たという逸話から。「ヤコブの梯子」ともいう。


 

因みに、「天使の梯子」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 皓皓と天使の梯子雪山に 
② 凍て風の離島に天使の梯子かな
③ 蝋梅のかなた天使の梯子見ゆ



 

①は、雪山の上にかかる「天使の梯子」を詠んだもの。*皓皓(こうこう):しろじろと明るい様子。
②は、長崎県の五島列島で詠んだ句。*凍て風(いてかぜ):冬に吹く冷たい風。
③は、「蝋梅(ろうばい)」との取り合わせで詠んだ句。


「天使の梯子」に関しては、季語でないこともあり、詠まれた句はほとんどない。よって、参考句は割愛する。