高台に獅子柚子うなる冬至かな
( たかだいに ししゆずうなる とうじかな )


今日は、冬至(とうじ)の日。北半球では一年の間で昼が最も短く、夜が最も長くなる。昼間の太陽の高さも一年で最も低く、日射しが弱くなるという。

裏を返せば、この日を境に昼が長くなっていく。そのことから「一陽来復(いちようらいふく)」とも言われている。これは、衰えていた太陽の力が再び勢いを増してくるという意。


 

それでは、この日が最も寒い日かというと実はそうではない。大地も海も夏の温かさを内部に保っており、それが冷めきるのはこれから。2月の節分の頃まで寒さが日々増していく。

そんなことから「冬至冬中冬初め」(とうじふゆなかふゆはじめ)と言われ、実際には、この日から本格的な冬が始まるとも言われている。
 

 

ところで、冬至に関連して、古くからいろいろな慣習がある。例としては柚子湯(ゆずゆ)に入り、冬至がゆ(小豆がゆ)や南京(かぼちゃ)を食べることなど。これらを行うことにより、風邪をひいたり、中風 (ちゅうぶう)になったりすることがなくなるそうだ。


 

前書きが長くなったが、本日の掲句は、植物園で見た「獅子柚子(ししゆず)」を「冬至」にかけて詠んだもの。後述の通り、「獅子柚子」は「柚子」と同類ではないのだが、それを知ってか知らずか、「柚子」代わりに風呂に浮かべて楽しむ人もいるそうだ。

 

中七の「うなる」は「獅子柚子」の「獅子」を意識したもので、「獣が低く力の入った声を出すこと」をいうが、「金がうなるほどある」というように「あり余るほどある」という意味もある。

 

尚、「獅子柚子」は「鬼柚子」ともいい、通常の「柚子」と同様に秋の季語に分類されているが、本句では「冬至」を主たる季語(冬)にしている。

因みに、過去には「鬼柚子」で以下の句を詠んでいる。

鬼柚子の南瓜の如き冬至かな

*南瓜(かぼちゃ)



 

獅子柚子(鬼柚子)は、ミカン科ミカン属ブンタン類の常緑低木。「柚子」の名がついているが、「文旦(ぶんたん)」の亜種。中国が原産で奈良時代に日本に渡来。花期は5月~6月頃で、芳香のある白色の花を咲かせる。
* 「獅子柚子」と「鬼柚子」は品種が全く違うという説もあるが、ややこしくなるので、ここでは触れない。



果実の収穫期は10月中頃からで12月中頃。果実の直径は20cmほどあり、小さい南瓜ぐらいになる。皮が非常に厚く、果肉は甘味が少なく生のままではあまり美味しくない。むしろ、マーマレード、砂糖漬け、ピールなどに加工して食すことが多い。

 

*通常の柚子  (直径4~8cm)


名前は、果実の姿形が「獅子」あるいは「鬼」のようであり、色などが柚子に似ていることから付けられた。


 

因みに、俳句では、「獅子柚子(鬼柚子)」も「柚子」の一種と考えられており、ネットで以下の句が見つかったので参考まで掲載した。

【獅子柚子(鬼柚子)の参考句】
世離れの鬼柚子一個飾るのみ /飯島晴子
獅子柚子の庭の明るさ屋敷神 /中島陽華
獅子柚子の窪み窪みに日の溜まる /雨村敏子
獅子柚の十顆が雨の川照す /滝川あい子
鬼柚子といふ大きくて軽きもの /細川加賀