張り詰めし気に凛然と寒椿
( はりつめし きにりんぜんと かんつばき )


冬に咲く花は少ないと、これまで何度も言ってきたが、昨日取り上げた「寒桜」のように、主として春に咲く花で冬に花を咲かるものも幾つかある。今日取り上げる「寒椿(かんつばき)」もその一つである。


 

先日行った植物園には、様々な「椿(つばき)」が植えてあるエリア「つばき園」があるが、こちらでは約250品種600本の「椿」が植栽されている。中には、冬に花を咲かすものがある。


 

先日行った時は、「菊冬至(きくとうじ)」という「椿」が咲き始めていた。「椿」の近縁種に「山茶花(さざんか)」があるが、それと比べると、その咲きようは端正で凛としていた。

本日の掲句は、その様子を詠んだもの。上五の「張り詰めし」は緊張感のある状態をイメージしたもの。「凛然」は「勇ましく凛々しい様」をいう。


 

ところで、よく聞かれることだが、「山茶花」と「椿」の違いは何なのか。もとより花期が違うことで判別できるが、早咲きの「寒椿」とは咲く時期が重なるので、花だけでは、どちらなのか分からないことがある。


 

その場合、最も確かな見分け方は花の散り様にある。「山茶花」は、花びらが分かれて散るが、「椿」は花ごと付け根から落ちる。だから、樹下を見れば、どちらであるか凡そ見当がつく。


 

それから、もう一点注目したいのは、花の咲き方だが、「山茶花」は木全体を覆うように一気に花を咲かすが、「椿」は、少しずつパラパラと花を咲かす。もちろん例外はあると思うが・・・。


 

話は戻って、「寒椿」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① お社の甍に見ゆる寒椿
② お社に雪ぬくぬくと寒椿
③ 寒椿ちょっと控えてしとやかに



 

①は、ある神社の瓦屋根=甍(いらか)の上に咲いているのを見て詠んだ句。
*お社(おやしろ):神を奉ってある神殿や建物などを丁寧に言う言い回し。 
②は、①と同じ神社で、赤い「椿」の花を白い綿のような「雪」が覆っている光景を見て詠んだ句。寒いというよりもぬくぬくと温かい感じがした。
③は、「山茶花」と較べ、控え目で淑やかな感じがする「寒椿」の印象を詠んだ。


 

「寒椿」「冬椿」を詠んだ句は非常に多い。以下には、特に「寒椿」で詠まれた句をいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)


【寒椿の参考句】
新らしき家のふゑけり寒椿 /正岡子規 
寒椿昨日の花は遠ざかり /加藤楸邨
寒椿持てば浅草オペラ湧く /秋元不死男
寒椿挿したき壺も割れにけり /桂信子 
寒椿残照の雲とどまらず /鍵和田秞子


*本記事は日時指定投稿です。現在遠出しており、コメント等への返信は11月24日以降になります。ご了承ください。