震えつつ見上げる先に寒桜
( ふるえつつ みあげるさきに かんざくら )


先日行った植物園は、冬のほの暗い雰囲気が漂っていたが、その中で目を引いたのが「冬桜(寒桜)」である。


*子福桜

 

園内には、約180品種500本の「桜」が植えてあるそうだが、その桜林の一角に冬に花を咲かす「冬桜(寒桜)」が何種類か植えてあり、あるものは満開になっていた。

*子福桜

 

「桜」は言うまでもなく、春を華やかに彩る花として知られているが、この時期に咲く「冬桜(寒桜)」は、華やかというよりも少し寂しさを感じさせる。

*十月桜

 

本日の掲句は、そんな感慨を持ちながら詠んだ句である。寂しさを感じるのは、見る人が少ないことにもよるが、特に気温が低くなるとゆっくり見る気分にはなれない。

*十月桜

 

尚、下五の「寒桜」は特定の品種を指すものでなく、冬に咲く桜のことを総称したもので、「冬桜(ふゆざくら)」と共に冬の季語となっている。「寒桜」「冬桜」という品種の「桜」もあるが、俳句では、それだけを限定して詠まれることはない。

因みに、冬場に咲く桜で代表的なものとしては、以下のものが上げられる。(再掲)


*冬桜

 

子福桜(こぶくざくら)十月桜と支那実桜の雑種。開花は十月桜と同様。花弁が20枚~30枚と多い。1つの花から2つ以上の実をつけるので、この名になったとのこと。
十月桜(じゅうがつざくら):10月~1月と3月~4月の二度咲き。花弁が5枚から18枚。八重咲きが多い。
冬桜(ふゆざくら):11月~12月と4月の二度咲き。白色~淡紅色で一重咲き・小輪。別名小葉桜。
四季桜(しきざくら):豆桜と江戸彼岸との雑種。10月頃から咲き始め4月に盛りとなる。花は一重の白又は淡紅色。

*冬桜

 

話は戻って、「冬桜」「寒桜」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

*どちらで詠むかは決まりがなく、句のリズムと気分による。


【関連句】
① 満開の光は淡し冬桜
② 澄みわたる空にさみしき冬桜
③ 学び舎の試験控えて寒桜


*四季桜

 

①は、12月中旬に詠んだ句。満開の「冬桜」は、陽がさして淡く光っていたが、愛でる人もなく何となく沈んだ感じだった。
②は、京都御苑で咲いていた「冬桜」を見て詠んだ句。青空をバックに清楚に咲いていたが、やはり見る人もなく淋しい感じがした。
③は、1月下旬にある大学の横を通った時に、満開になっている「寒桜」を見て詠んだ句。もうすぐ試験シーズンを迎える頃。


*四季桜

 

「寒桜」「冬桜」を詠んだ句は結構ある。本ブログでも以前に何句か紹介したが、今回はそれ以外のものを選んで掲載した。

【寒桜、冬桜の参考句】
いそがしく目白花訪ひ寒櫻 /八木林之介
いつまでも咲いてさびしゑ寒ざくら /石原八束
みづうみの晴れてしんしん冬ざくら /関戸靖子
仰ぎゐておのれ忘るる冬桜 /根岸善雄
冬ざくら世を幻と思ふ日も /吉村ひさ志


*本記事は日時指定投稿です。現在遠出しており、コメント等への返信は11月24日以降になります。ご了承ください。

*四季桜