鳳仙花その実摘まめばくるりんぱ
( ほうせんか そのみつまめば くるりんぱ )


実のところ、先週の土曜日は、例により2週間ぶりに京都の植物園に行ってきた。「薔薇(ばら)」や「向日葵(ひまわり)」など夏を代表する花は、そのほとんどが花を散らしていたり萎れていたりで、ほぼ終わりかけていた。

 



その一方で、秋の花が順次開花しだしていたが、その一つが今日取り上げる「鳳仙花(ほうせんか)」である。この花は、非常に庶民的な感じの花で、幼い頃住んでいた田舎の家の庭にも沢山植えてあった。

その頃は、花にそれほど興味があった訳ではないが、果実を摘まむと簡単に割れて、中から黒い種が飛び出すのが面白くて、幾つも摘まんで遊んだことを思いだす。



本日の掲句は、そのことを植物園で改めてやってみた時の状況を詠んだ句である。実から種が飛び出す様子をどう表現するか、いろいろ考えたが、最終的には「くるりんぱ」という擬態語が使った。「鳳仙花」は秋の季語。

何年か前に、以下の句を詠んでいるが、この句よりは何倍か面白いと思うがどうだろう。


実を摘めば種弾けたり鳳仙花

*鳳仙花の実と種

 

ところで、植物の名前には非常に酷いものもあるが、逆に何でこんな素晴らしい名前が付けられたのだろうと訝(いぶか)しく思うものもある。

この「鳳仙花」もその一つだが、「鳳凰」と「仙人」の2語を合成したものだそうだ。 花の形が想像上の鳥、霊鳥である「鳳凰」の羽ばたく姿に似ていることから、「仙人」は、中国の昔話からとったとのこと。 
*仙人の昔話については長くなるので割愛する。



話は戻って、「鳳仙花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① そういえば田舎の庭にも鳳仙花
② 山鳩がなく朝ぼらけ鳳仙花
③ 不器用に生きて今咲く鳳仙花




①は、この花を見た時に、まだ幼い頃の田舎の庭に何本も植えてあったことを思い出して詠んだ。
②は、そんな「鳳仙花」と最近よく鳴いている「山鳩」とのとりあわせで詠んだ句。「朝ぼらけ」とは、夜がほのぼのと明けるころ。夜明け方。
③は、島倉千代子が歌っていた「鳳仙花」の一節「やっぱり器用に生きられないね」を参考に詠んだ句。



「鳳仙花」は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草。東南アジア、インド原産で日本には中国経由で17世紀頃渡来したとのこと。花期は7月~9月。本来の花色は赤だが、白、ピンク、紫など多彩。



別名に「爪紅(つまべに、つまくれない)」があるが、これは、昔女の子が爪を染めるのに使ったことに由来する。また、沖縄では「てぃんさぐ」と呼ばれ、民謡「てぃんさぐぬ花」が有名。



「鳳仙花」を詠んだ句は結構ある。本ブログでもこれまで20句以上紹介したが、以下には、その中から特に好むものを再掲した。


【鳳仙花の参考句】
襲ねたるはなびらおとし鳳仙花 /後藤夜半

 *襲ねる(かさねる)
正直に咲いてこぼれて鳳仙花 /遠藤梧逸
チヨツピリと駄菓子ならべて鳳仙花 /種田山頭火
湯の町は端より暮るる鳳仙花 /川崎展宏
雨の日は雨にはじけて鳳仙花 /鷹羽狩行