一瞬の風心地よき風船葛
( いっしゅんの かぜここちよき ふうせんかずら )


本日は「立秋の日」で、この日より暦の上では秋となる。また、「立秋」は二十四節気の一つで、期間としては8月8日~22日。二十四節気の中でも特に大切な「八節」の一つとされている。

*「八節」とは、「夏至」「冬至」の「二至」、「春分」「秋分」の「二分」、それぞれの中間の「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の「四立(しりゅう)」のこと。


 

ただ、蒸し暑さは一向に収まる気配がなく、今しばらくは猛暑日が続くと予報されている。そんな状況下だから、瞬間的にでも風が吹くと非常に心地よく感じることがある。


 

本日の掲句は、そのことを緑のカーテンを作る「風船葛(ふうせんかずら)」にかけて詠んだ句である。尚、「風船葛」は7月中頃より花を咲かせるので夏の季語と思われがちだが秋の季語に分類されている。


 

因みに、「風船葛」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① みんなみの窓辺涼しき風船かずら
② 風吹けばゆるゆるゆるる風船葛
③ 澄みわたる遠い世界に風船葛



 

①は、ある家の南窓に植えてあったのを見て詠んだ句。残暑がまだ厳しい初秋の頃だったが、敢えて夏の季語の「涼し」を入れ季重なりとした。
②は、風が吹くと緑の葉をバックに紙風船ような果実が、ゆらゆらと揺れる様子を詠んだもの。
③は、、懐かしいフォークソング「遠い世界に」を思い出しながら詠んだ句。あれから40年。過ぎてしまえば、光陰矢のごとし、夢幻のごときである。


 

「風船葛」は、ムクロジ科フウセンカズラ属の蔓性一年草。北アメリカ、アフリカ原産。花を観賞するためより、風船状の果実を観て楽しむために栽培されることが多い。花期は7月~9月頃。白い5mmくらいの花を咲かせるが、ほとんど目立たない。

*風船葛の花と果実


 

また、果実は8月~10月につける。茶色く熟した果実からは黒地に白いハート模様の入った可愛い種が3つとれる。(猿の顔に見立てることも。)

*風船葛の種子

                                
 

既述の通り、家庭の壁面緑化(緑のカーテン)に使われることも多い。特に、二酸化炭素の吸収力が他の植物の5~6倍あり、地球温暖化の抑制にも役立つと注目されているとのこと。



 

「風船葛」が詠まれた句はそれなりにあるが、以下にはその中からいくつか選んで掲載した。「かずら」は旧仮名遣いでは「かづら」。(過去に掲載したものは除く。)

【風船葛の参考句】
風船葛をとこの遊びたはひなき /橋本榮治
風船かづら日の色帯びて来たりけり /高澤良一 
湖を見て来しと風船葛置く /山本洋子
雨粒の弾む風船葛かな /甲士三郎
風船かづら遊ぶにはよき風生れ /倉橋羊村