大学の裏手に古き花石榴
( だいがくの うらてにふるき はなざくろ )


京都には大学が多いといわれるが、都道府県別では6位で34校だそうだ。だから、大学関係施設も多く、近くの大学に寄った時などは構内を散策することがよくある。敷地が広いので様々な樹木が植えてあり、あまり他所では見られない花にも時々出会うことがある。



本日の掲句は、先日たまたま寄った大学の裏手に「石榴(ざくろ)」の木が植えてあって、人知れず花を咲かせているのを見て詠んだ句である。「石榴」にしては大木だが古い木のようで結構傷んでいた。「石榴の花」「花石榴」は夏の季語。「石榴の実」「実石榴」は秋の季語。

 



ところで、「石榴の花」は、鮮やかな紅色で近づいて見れば可憐な感じがするが、花が小さくまばらに咲くので、それほど華やかな感じはしない。なのに何故庭木として好まれるかというと、花だけでなく、その果実や黄葉が美しいからだと言われている。



確かに、秋に実る真っ赤な果実は魅力的で、外皮が裂けると、ルビーのような透明な粒が無数に現れ生食もできる。ただ、この「石榴」の魅力は、それ以外にもあり、花の莟から果実へ変化する姿が非常に面白い。



これまで、何度か紹介したことがあるが、それをまとめたのが「石榴の変身物語(2019年改訂)」という記事である。自分としては、まあまあの出来と思っているので、ぜひ以下のリンクにアクセスし、ご笑覧いただきたい。(もう見飽きたという人はパス。)

「石榴の変身物語(2019年改訂)」 ← クリック



因みに、「石榴の花」「花石榴」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 万緑に泳ぐ金魚か花石榴
② 花石榴鳥居の色に似せて咲き
③ 図書館に紅一点の花石榴




①は、「石榴の花」を真っ赤な「金魚」に喩え、緑葉の上を泳ぐように咲いていると詠んだもの。「万緑(ばんりょく)」「金魚」「花石榴」がともに夏の季語なので、季語が三つの季重なりの句になった。
②は、石榴の花の色が、平安神宮の大鳥居の色と同じだと気付いて詠んだ句。
③は、図書館の駐輪場に植えてある「石榴」の花を見て詠んだ句。尚、「紅一点」はある漢詩が語源になっているが、その漢詩で詠われた「紅」は「石榴の花」を指すそうだ。



「石榴」は、ザクロ科ザクロ属の落葉小高木。原産地はイラン、トルコなど。5月~6月に鮮紅色の花をつける。既述の通り、果実は球状で秋には真っ赤に熟す。

漢名では、かつて「安石榴」と書かれていた。「安石」とはペルシャのことをさし、「榴」は果実が瘤(こぶ)に似ているところから、木に成る瘤という意味。日本に来て、安がなくなり「石榴」という表記になったとのこと。


*石榴の実 (昨年の9月末に撮影)



*割った石榴の実 (果物店で買ったもの)


 

「花石榴」「石榴の花」を詠んだ句はままあるが、以下には、ネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。尚、「石榴」は「柘榴」とも書く。(過去に掲載したものを除く。)

【花石(柘)榴、石(柘)榴の花の参考句】
あした濡れ一と日火色に花ざくろ /和知喜八
平凡に勤め驕らず花石榴 /野中紫陽
花石榴風が灯してゆきにけり /三村 純也
ざくろ咲き通院かんかん照りの道 /高澤良一
ざくろ咲く屋根の上行く新幹線 /炭谷種子