石楠花や散るも残るも入り乱れ
( しゃくなげや ちるものこるも いりみだれ )

 

今日取り上げる「石楠花(しゃくなげ)」は、「躑躅(つつじ)」の仲間だが、その咲き方に特徴があり、枝先に5~12個の花が集まって毬のように咲く。そのことから、通常の「躑躅」とは別物として扱われている。



また、「躑躅」と同じく4月初旬頃から咲き始めるので、晩春の季語だと思われがちだが初夏の季語に分類されている。*一部、春に分類しているところもある。



先週の土曜日に行った植物園では、その「石楠花」が20本ほど植わっているエリアがあり、既に萎れてしまったものも散見されたが、まだ花が残っているもの、これから咲くものが入り乱れていた。

本日の掲句は、そんな様子を詠んだ句である。

*写真は4月中に撮ったものも含む。



因みに、「石楠花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 山盛りに石楠花咲くや疎水べり
② 古池の石楠花赤き小寺かな
③ ポンポンでファイトファイトと石楠花の花




 

①は、毬のような「石楠花」が幾つも重なり合って咲いている姿を詠んだもの。
②は、ある小寺の古池の畔で「石楠花」が赤い花を咲かせていたのを見て詠んだ句である。その花姿が古池にマッチして、しっとりした美しさを醸しだしていた。
③は、ロンドンオリンピックが開催された2012年に詠んだもの。「石楠花」をチアリーダーが手に持つ「ポンポン」に見立てた。

*ポンポン:先を丸くした房(玉房:たまぶさ)をフランス語でpomponと呼び、それから派生した外来語だと考えられている。



「石楠花」(石南花とも書く)は、ツツジ科ツツジ属シャクナゲ亜属の常緑広葉樹。原産地はネパールのヒマラヤなどで、日本に自生するものは、かなり高い山や渓谷に咲く。



現在は、「西洋石楠花」が園芸品種として改良され、庭や公園にも植えられている。花は、派手で大きく、花色は、白、ピンク、赤、赤紫、黄色など。開花時期は、品種により違うが、4月頃~6月頃。



名前は、漢名の「石南花」を 「しゃくなんげ」と読み、その後少しずつ変化して「しゃくなげ」となったという説が有力。また漢名の「石南花」は「石の間に生え、南向きの土地で育ちやすいこと」に由来するとのこと。



 

「石楠花」「石南花」を詠んだ句は結構あるが、以下には、その中からいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

【石楠花の参考句】
石楠花にひびきて深き渓の水 /深見けん二
石楠花に谿流音をなせりけり /清崎敏郎
石楠花の烈火訪ふたる山荘に /高澤良一 
石楠花やひゞきを異に滝ふたつ /橋本冬樹
石楠花や雨に削がれし牧の道 /皆川盤水