街角に陽気いざなう花菜かな
( まちかどに ようきいざなう はななかな )


最近、近辺でも様々な春の花がみられるようになってきた。立春以降、本ブログでも「万作(まんさく)」「繁縷(はこべ)」「犬ふぐり」を取り上げたが、今日取り上げる「菜の花(なのはな)」も春を代表する草花一つである。


 

先日、この花が街中の畑で咲いているのは見たが、時々住宅街の四つ角などに植えてあることがある。その花の黄色は、まさしく春の陽気を誘(いざな)っている感じがする。

本日の掲句は、そんな印象を詠んだ句である。


 

ところで、「菜の花」という名称は、特定の植物を指すのでなく、アブラナ科アブラナ属に分類されている植物の総称である。「花菜(はなな)」は、その中でも花が開いたものを指し、「菜の花」とともに春の季語。


 

尚、「花菜」を「かさい」と読むと、花を食用とする野菜をさす。カリフラワー、ブロッコリーなど。「菜花(なばな)」ともいう。


 

因みに、「菜の花」「花菜」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 菜園に陽気を放つ花菜かな
② 菜の花や児らもはしゃぎぬ遊園地
③  菜の花に入日差し込む山の畑



 

①は、近くの菜園の一角で、「菜の花」が鮮やかな黄色の花を咲かせていたのを見て詠んだ句。
②は、様々な遊具が設置されている広場(遊園地)で遊んでいる児童に、近くの花壇に群生している「菜の花」をかけて詠んだ句。
③は、数年前の3月に房総半島のバスツアーに行った時に詠んだ句。日もかなり西に傾いていて、その光が菜の花畑の一面を照らしていて何とも美しかった。


 

既述の通り、「菜の花」「花菜」はアブラナ科アブラナ属に分類されている植物の総称だが、その主なものを上げると以下のようになる。

「油菜(あぶらな)」 「蕪菜(かぶらな)」
「高菜(たかな)」  「芥子菜(からしな)」 など


 

変わり種としては、中国原産の「紅菜苔(こうさいたい)」がある。以下の写真のように、葉は緑色だが茎から葉柄、葉脈が紅紫色。とう立ちした花芽とその若い茎や葉は食用になる。
*赤紫色になるのはアントシアニンが含まれているためで、茹でると緑色になる。日本では1970年代から本格的な栽培が始まったとのこと。

*紅菜苔


 

「菜の花」「花菜」を詠んだ句は非常に多く、これまで、本ブログでも30句以上紹介してきたが、以下には、その中から特に好むものを選んで再掲した。

【菜の花、花菜の参考句】
菜の花や月は東に日は西に /与謝蕪村
菜の花に光る時あり城の鯱 /高浜虚子
菜の花といふ平凡を愛しけり /富安風生
菜の花のどこで逢ひてもよき黄かな /後藤比奈夫
派手ながらどこか控へ目菜の花は /池田笑子