冬立つも春の装いオキザリス
( はいぐんの かぶとのごとく かれはちす )


最近、近辺を散歩すると時々見かける花に「オキザリス」がある。秋から冬へと向かうこの時節に、明るいピンク色の花と黄緑色の葉っぱ。これって春の色合いではと、少し違和感さえ覚えるほどである。


 

本日の掲句は、そんな印象を詠んだもの。実のところ、「オキザリス」には、いろいろな種類があり、「オキザリス・ボーウィ」(掲載した写真の花)のことを指していると言わなければ、この句は成立しない。今回は、備忘録として掲載した。


 

ところで、「オキザリス」は、カタバミ科カタバミ属に分類される園芸品種の総称で800~850種あると言われている。咲く時期も違っていて、最近では年中、様々な色、形のものが見られる。


 

和名では「酢漿草(かたばみ)」と呼ばれるが、特に夏に花を咲かす在来種の「酢漿草(かたばみ)」や外来種の「紫かたばみ」「芋かたばみ」は夏の季語になっている。それ以外で春に花を咲かすものは「オキザリス」と呼び春の季語になっている。


 

その線引きは必ずしも明確でなく、今回取り上げた「オキザリス・ボーウィ」などは、秋から春にかけて長期間咲くので、どう取り扱うべきか非常に悩ましい。従って、掲句では「冬」という季語を敢えて入れた。


 

因みに、「オキザリス」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。いずれも「オキザリス」の名前に語呂合わせした駄洒落の句。


【関連句】
① 朝寒やまだ起きざりしオキザリス
② 置き去りのオキザリスかな秋の路



 

①は、ある寺の参道付近で「オキザリス・ボーウィ」が群生しているのを見て詠んだ句。まだ朝方で寒かったせいか花びらは閉じたままだった。

*朝寒(あさざむ):秋の朝方の冷え込みに寒さを感じること。秋の季語。
②は、路地裏でひっそり咲いているのを見て詠んだ句。まるで季節に「置き去り」にされているようだった。


 

今回取り上げた「オキザリス・ボーウィ」は、カタバミ科カタバミ属の多年草(球根植物)で原産地は南アフリカ。日本には江戸時代に渡来。

 

花期は10月~3月と非常に長い。花径は3~5cmとカタバミ属の中では大きい。花色はピンク、葉はハート型の小葉を3つ組み合わせたもので薄緑色。葉と花は、夜間あるいは雨天や曇天のときに閉じる。

和名は「花酢漿草(はなかたばみ)」「西洋酢漿草(せいようかたばみ)」。尚、「オキザリス」の語源は、ギリシア語の「oxys(酸っぱい)」で葉や茎に酸味があることからついた。


 

「オキザリス」を詠んだ句は意外と少ないが、以下には、ネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。

【オキザリスの参考句】
母のゐぬ微熱の午後やオキザリス /岡本伸
俊寛に消されてゆく船オキザリス /中島衣子
野に埋る地雷のいくつオキザリス /島青櫻
露西亜語の文書く卓のオキザリス /大野雑草子
老眼にくもる小花やオキザリス    /吉田清子