清らかな流れに垂れて熟るる柿
( きよらかな ながれにたれて うるるかき )


秋は、「実りの秋」と言われるように、様々な果物が実る季節と言われている。「桃(もも)」「無花果(いちじく)」「葡萄(ぶどう)」「梨(なし)」「柿(かき)」「林檎(りんご)」などなど。


 

挙げれば切りがないが、俳句では、これらを「食物」という区分で分類し、いずれも秋の季語になっている。ただ、本ブログでは、「植物」を中心に句を詠んでいるので、実際に草木に生っている状態のものを、できるだけ扱うようにしている。


 

だから、対象も自ずと限定されてくるが、今の時期に近辺(主として京都市内)でよく見かけるものに「柿」がある。数日前も街中を流れる白川(しらかわ)の水面に垂れるように多くの「柿」が鈴なりになっているのを見た。



本日の掲句は、その様子を見て詠んだ句だが、何とも爽やかな光景だった。「柿の実」は秋の季語。


 

因みに、「柿」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
*冬の季語「残り柿(のこりがき)」などで詠んだものは除く。

【関連句】
① うまそうに柿柿色に色づけり 
② 柿なれど鐘のならない古き寺
③ 柿熟れて啄む鳥もなかりけり



 

①は、柿の実が鮮やかな柿色に色づいているのを見て詠んだ句。
②は、正岡子規の句「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」のパロディー。お寺も後継者難と聞く。
③は、柿が熟れて鈴なりになっているが、採る人もおらず啄む鳥さえ全く見かけない、そんな情景を見て詠んだ句。


 

「柿」は植物分類上では、「柿の木(かきのき)」と言われ、カキノキ科カキノキ属に属する落葉樹である。原産地は東アジアで、日本には弥生時代の頃に渡来したとのこと。

「柿」には「甘柿」と「渋柿」があるが、「甘柿」は「渋柿」の突然変異種と考えられており、日本特産の品種だそうだ。


 

花は、白黄色の地味な花で、5月の終わり頃から6月にかけて咲く。葉は秋に紅葉するが、その「赤」い葉と「黄」色の実から、 「赤黄」→ 「あかき」→ 「かき」になった という説がある。

熟した果実は食用に供され、幹は家具材として用いられ、葉は茶の代わりとして飲まれ、柿渋は防腐剤として用いられる。それ故、柿は古くより非常に重宝されてきたそうだ。


*柿の花


 

「柿」を詠んだ句は非常に沢山あり、本ブログでも何句か紹介したことがある。以下には、それからいくつか選んで掲載した。

【柿の参考句】
渋柿や嘴おしぬぐふ山がらす /加舎白雄
潮風に赤らむ柿の漁村かな /尾崎放哉
行楽の眼に柿丸し赤や黄や /川端茅舍
渋柿やボクよりオレで押し通す /大塚千光史
柿たわわ誰も嘗めてはくれもせず /山田六甲