南国の鳥舞う如く夢百合草
( なんごくの とり まうごとく ゆめゆりそう )


今日取り上げる「百合水仙(ゆりずいせん)」を初めて見たのは、ある山地の温泉に行った時で、民家の畑の一角に植えてあった。

その時の第一印象は、非常に変わった色模様の花だということ。日本原産の花でないことは間違いないが、さてどこの花なのか。早速、ネット図鑑で調べたところ、原産地はインカ帝国のあった南米だと知った。


 

それ故、「インカの百合(Lily of the Incas)」という別名があるが、以下の句はそのことを知り詠んだ句である。

麗しく遥かインカの百合の咲く


 

尚、「百合水仙」という名は、見た目が百合に似ており、水仙のような特徴を持っていることから付けられたとのこと。後には、以下の句を詠んだ。

栄光のインカの色や百合水仙

この花の赤茶けた色合いなどや奇抜な模様は、どこかしらインカ帝国の民族衣装や風土を想起させる。


 

更にインカ帝国をイメージした時に、「コンドルが飛んでいく」という歌があることを思いだし、それにかけて詠んだのが以下の句。

コンドルが舞う空の下百合水仙


 

以上の通り、この草花とインカ帝国との関連で何句も詠んできたが、ここで少し視点を変えようと思い詠んだのが本日の掲句。

特に、「百合水仙」の花の模様に注目し、それが鳥の羽に似ていると思って詠んでみた。下五は、もう一つの別称である「夢百合草(ゆめゆりそう)」を使った。



 

この名前の由来についてもネット調べてみたが残念ながら分からなかった。ただ、夢百合草」というタイトルの歌曲を、さだまさし氏が作詞作曲し2002年に発売していることを知った。

興味がある方は、同名で検索すると動画が見られるが、その歌詞の中で「夢見る夢子の夢百合草」と歌っているのが印象的だった。


 

尚、「夢百合草」「百合水仙」は季語にはなってないが、夏の今頃に咲くので、掲句では、夏の季語に準じるものとして詠んでいる。


 

「百合水仙」「夢百合草」は、アルストロメリア科ユリズイセン属の多年草。原産地は南アメリカでアンデス山脈の寒冷地に自生する。わが国へは大正末期か昭和初期に渡来したといわれている。
*植物分類体系は様々あり、ユリ科、ヒガンバナ科、ユリズイセン科に分類されることもある。どれが正解なのか分からないので、上記の分類はあくまでも参考例として示した。

花期は5月~7月ごろだが、種類によっては4月~11月頃まで咲くとのこと。茎頂に10個近くの花を付ける。花色は白、赤、オレンジなど多彩。


 

花弁は外側の3枚が丸みがあって大きく、内側の小ぶりの3枚のうち上の2枚には条斑(じょうはん)と呼ばれる模様がある。これは、昆虫を誘うためのネクターガイドだと考えられている。*ネクターガイド(蜜標):花の蜜のありかを示す印。

季語になっていないこともあり、「夢百合草」「百合水仙」で詠まれた句はほとんどないので、参考句は割愛する。

*本記事は日時指定投稿です。現在遠出しており、コメント等への返信は8月7日以降になります。ご了承ください。