裏庭にやさしき風の蓮華草
( うらにわに やさしきかぜの れんげそう )


今日取り上げる「蓮華草(れんげそう)」は、田舎に住んでいた幼い頃、田んぼ一面に咲いているのをよく見かけたが、都市部に住んでいる現在は見る機会があまりない。

ただ、数年前に、あるお寺の裏庭(空地)で群生しているのに出会い、それ以来毎年そこで見れるようになった。


 

本日の掲句は、今年もその場所で見て詠んだ句であるが、盛りは少し過ぎている感じだった。「蓮華草」は別称の「紫雲英(げんげ)」と共に春の季語。


 

因みに、過去に「蓮華草」を詠んだのは以下の二句のみで、見かけることが少ないせいか意外に詠んでいない。


【関連句】 
① 古寺の裏や紫雲英の花の苑 
② 蜜蜂の羽音かそけし蓮華畑 



 

①は、「紫雲英(げんげ)」を使って詠んだ句。ある寺の裏庭で群生しているのを初めて見た時は少々興奮した。
②は、数匹の蜜蜂が花から花へと飛び回り吸蜜していたのを見て詠んだ。「蓮華畑(れんげばた)」は、最近ではあまり見られなくなった。


 

「蓮華草」はマメ科ゲンゲ属の多年草で中国原産の帰化植物。日本には17世紀ごろに渡来し、明治以後になって急速に広まったとのこと。
*当初は緑肥(りょくひ)および牛の飼料とするため、秋に種を蒔き翌春に花を咲かせていたが、化学肥料が使われるようになってからはほとんど植えられなくなった。


 

花期は4月~5月。花は、葉腋から花柄を出し、その先端に輪生状にまとまって咲く。花色は紅紫色だが、まれに白色のものもある。

 

 

「蓮華草」の名前は、花の形や色が、その「蓮(はす)」の花に似ていることから付けられたと言われている。尚、「蓮華」と言えば、通常は「蓮」の花のことをさすので要注意。
*余談だが、中華料理などの食卓で使われる陶製の匙のことを「レンゲ」というが、これは匙の形が、散った蓮の花(蓮華)の花びらの一片に似ていることによる。


 

一方、「紫雲英」は、花が一面に咲いている様子が、雲が棚引いているようなので付けられた漢名。植物分類上では、この「紫雲英」が正式。



 

「紫雲英」もしくは「蓮華草」を詠んだ句はままあり、以下に何句か選んで掲載した。


【蓮華草、紫雲英の参考句】
手に取るなやはり野に置け蓮華草 (正岡子規)
胸までの紫雲英仔犬は迷ひゆく (中村草田男)
紫雲英野の閉ざせどせんなきごとき門 (加倉井秋を)     
紫雲英野や虹消えし空まだ濡れて(市ヶ谷洋子)
飛鳥路をゆくやとぼとぼ蓮華草 (村井一子)


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