奔放に生きるが勝ちや春紫苑
( ほんぽうに いきるがかちや はるじおん )


ここ数日間は、樹木の花を取り上げてきたが、草花に目を転じれば、今最も目立って見られるのが「春紫苑(はるじおん)」である。

これまで、晩春の一時期に咲き、夏になれば、近縁種の「姫女苑(ひめじょおん)」にバトンタッチする草花と認識していたが、気のせいか今年は至る所で繁茂している。


 

名前は、秋に咲く「紫苑(しおん)」に似た春の花ということで、付けられたようだが、それと較べれば、花の大きさはかなり小さく見劣りする。

しかし、花色は白色に少し紅色が混じったものもあり、野の花の中では、艶やかで可愛い感じがする。


 

本日の掲句は、その「春紫苑」が、野原、道端、川辺、空地など至るところに咲いているのを見て、その自由奔放さに少々呆れて詠んだ句である。「春紫苑」は春の季語。


 

ところで、先に近縁種の「姫女苑」について触れたが、草花に興味を持ち出した当初は、この区別がなかなかできなかった。


花は幾分小さいが、形は非常に似ているし、咲く場所なども似通っている。繁殖力も非常に旺盛である。


 

それでは、どのように見分けるかだが、これまで、何度か本ブログでも触れてきたが、参考まで再掲した。(写真掲載しているが、これだけでは判別が難しい。)
 

【春紫苑】 

花期は4~5月頃。つぼみは下向きにちょっと垂れる。白い花の部分はやわらかな感じ。葉っぱは茎を抱くような形でつく。茎は中が空洞。

 

【姫女苑】                               
花期は6月~9月頃。つぼみは上向きのことが多い。白い花の部分はピーンと張っている。
葉っぱは茎からストレートに伸びる。茎には髄(ずい)が詰まっている。

 

話は戻って、「春紫苑」については、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① いづこより我が荒庭に春紫苑
② 夏来るもほのか紅さす春紫苑
③ 目に見えぬ物恐ろしや春紫苑



 

①は、どこからか種が飛んできて、我が家の荒れた庭に根付いて花を咲かせている「春紫苑」を見て詠んだ句。
②は、立夏が過ぎても、まだ花を咲かせている「春紫苑」を見て詠んだ。「夏来る」が夏の季語なので本句は季重なり。
③は、昨年詠んだ句で、目に見えぬウィルスは恐ろしいが、そんなことを忘れさせるように「春紫苑」今年も咲いたというのが句意。(ちょっと無理があるかな?)


 

「春紫苑」は、キク科ムカシヨモギ属の多年草。北アメリカ原産の帰化植物で、大正時代の中頃に観賞用として日本に入ったと言われている。花には白とピンクのものがある。


 

別名に「貧乏草(びんぼうぐさ)」があるが、これは、貧乏で自宅の庭の手入れをする暇もないような家は、庭がこの草花だらけになるという俗説に由来する。「姫女苑」も同様の理由で同名で呼ばれている。


 

「春紫苑」は身近な花でよく見かけるが、あまり句には詠まれていない。よって参考句は割愛する。