屈むればまことちっちゃき春の花
( かがむれば まことちっちゃき はるのはな )
現在近辺では、非常に多くの野草が花を咲かせている。それを一つ一つ取りあげると掲載のタイミングを逸するので、今回は特に「道端の小さい花」をいくつかまとめて掲載したいと思う。
掲句は、その導入として詠んだ句。中七の「まことちっちゃき」は、単なる「小さき」では形容できないほど小さいという意味で使った。おそらく大概の人は、これらの野草の花を花として認識していないかもしれない。
さて今回は、近辺でも非常によく見かける「胡瓜草」「薺」「耳菜草」を取り上げた。花の大きさは2mm~8mm程度。それぞれについて、これまで詠んだ句と写真及び若干の説明を掲載したので、参考までご覧いただきたい。
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【胡瓜草(きゅりぐさ)】 *春の季語に準じる
小ちゃくて忘れられそな胡瓜草
「胡瓜草」は、ムラサキ科キュウリグサ属の越年草。原産地は日本、中国など。ムギ類と一緒に入ってきた史前帰化植物と考えられている。草丈は20cm内外。
花期は3月~5月。花色は青ないしは紫の五弁花。写真でアップにすると「勿忘草(わすれなぐさ)」に似ているが、花の大きさは2mmほどとかなり小さい。
名前は、茎や葉を揉むと胡瓜に似た匂いがすることから付けられたとのこと。別名に「胡瓜菜(きゅうりな)」がある。
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【薺(なずな)】 *新年、春の季語
道の辺はペンペン草の宴かな *宴(うたげ)
「薺」は、アブラナ科ナズナ属の越年草。原産地は中国で、この野草もムギ栽培の伝来と共に日本に渡来した史前帰化植物だと言われている。
花期は2月~6月。4枚の白い花弁を持つ小さな花(直径3mmほど)を花穂に多数付ける。
「なずな」の名は、撫でたいほど可愛い花の意味で「撫菜(なでな)」から転訛したと言われている。(異説あり)また、別称の「ぺんぺん草」は花後に三味線のバチのような実をつけることによる。同趣旨から「三味線草(しゃみせんぐさ)」とも言う。
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【耳菜草(みみなぐさ)】 *春の季語
小ささを数でカバーや耳菜草
町中でもよく見かける「耳菜草」は、外来種の「オランダ耳菜草」で、ナデシコ科ミミナグサ属の一年草。オランダなど欧州原産の帰化植物。日本には明治時代末頃に渡来し、今は日本全国に分布している。
花期は3月~5月。花茎を伸ばし先端に米粒大(6~8mm)の白い5弁の花が密集して咲かす。花色は白いじょで切れ込みがある。萼片5枚、雄蕊10本、花柱は5本。
葉は淡緑色で毛があり対生して付く。その葉の形がネズミの耳に似ていることから、名前に「耳」がつき、食べられることから「菜」がついたと言われている。