水鳥が潜れば見ゆる大水輪
( みずとりが もぐればみゆる おおみずわ )


昨日は、賀茂川(鴨川の上流)が枯草に覆われていて荒涼とした景をなしていたことを記したが、その川中には様々な水鳥たちが集い、諍いをすることもなく泳いでいた。



その中で、今回特に目を引いたのが、三羽の「金黒羽白(きんくろはじろ)」である。この水鳥は、カモ科の鳥だが、水に潜って餌をとる潜水鴨(せんすいがも)の一種である。
*冠毛がはっきりしないので、「鈴鴨(すずがも)」の可能性もある。


 

見ていると、首を少し上げ一気に水に潜る。すると水飛沫が上がり、そこから波紋が広がって、川面に大きな水の輪を形成する。そして数秒するとその端の方からひょいと当の水鳥が浮かんでくる。


 

三羽が少し間を置きながら何度も潜るので、水輪が重なって見えるが、川の真ん中に大きな模様ができては消える様は、見ていてほのぼのとした感じにさせてくれる。本日の掲句は、そんな様子を詠んだ句である。


 

ところで、以前本ブログでも記したことがあるが、「水鳥」とは、「海、湖、川などの水辺に棲息する鳥の総称」だが、俳句では主として「冬に水上で暮らす鳥」を指し、冬の季語になっている。


 

その代表的な鳥がカモ科の鳥だが、同じカモ科でも、水に潜るのが得意な「潜水鴨」が
「金黒羽白」などのハジロ属の鳥。水に潜る技術をどのように習得したのか分からないが、主として水生植物、昆虫、甲殻類、軟体動物、魚類などを食べるためだろう。


 

「金黒羽白」は、カモ科ハジロ属に分類される鳥。ユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になると南下し越冬。名前は、初列風切の上面に白い斑紋が入っていることで「ハジロ」、目の虹彩が黄色(金)で羽衣が黒なので「キンクロ」がついた。


 

尚、潜水して餌を採る水鳥で、近年よく見かけるのは、クイナ科オオバン属の「大鷭(おおばん)」とウ科ウ属の「川鵜(かわう)」である。これらはついては、以下の記事で取り上げているので、あわせてご覧いただきたい。

冬川に潜りを競う黒き鳥 ←クリック


 

参考句については、「水鳥」を詠んだものをいくつか以下に掲載した。


【水鳥の参考句】
水鳥の水掻の裏見せとほる (山口青邨)
長き足折りて水鳥巣に籠る (右城暮石)
水鳥のおもたく見えて浮きにけり (上島鬼貫)
水鳥の逆立ちしたる水輪かな (藤野山水)
水鳥に水尾したがひて静なり (下田実花)