花びらの乱れしものも蓮の池
( はなびらの みだれしものも はすのいけ )


夏の代表的な花で、忘れてはならないものの一つに「蓮(はす)」の花がある。この花は、鉢植えのものも時々見かけるが、やはり大きな池で見るのが良い。

 


 

ただ、そうなると場所が限られてくるが、幸いなことによく行く植物園には、蓮池がいくつかあり、毎年そこで鑑賞している。

 


 

1週間程前に行った時は、まだ花は少なったが、当日咲いたもの、前日かそれ以前に咲き、花びらがかなり乱れているもの、更には、花托だけが残っているものが混在していた。


本日の掲句は、そんな様子を詠んだ句である。「蓮の池」「蓮池」は夏の季語。

 


 

ところで、「蓮」は、仏教にも縁が深く、昔から、多くの日本人に親しまれてきた。しかも、花だけでなく、果実や根、大きな葉の変化も注目され、各季節で以下の季語ある。


【春】 蓮植う
【夏】 蓮、はす、はちす、蓮の花、蓮華、紅蓮、白蓮、蓮(の)葉、蓮(の)浮葉
【秋】 蓮の実、破(れ)蓮、敗苛、やれはす、やれはちす、秋の蓮、蓮の飯
【冬】 枯(れ)蓮、かれはす、かれはちす、蓮枯る、蓮の骨、蓮根掘る



 

話は戻って、「蓮」の花に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 蓮池の蓮咲き初めし五六輪
② 濁りなき蓮にピンクのグラデーション
③ 皓皓と葉叢に浮かぶ蓮華かな

 


 

①は、7月の初めに植物園の蓮池を訪れた時に詠んだ句。この時は、まだ五六輪しか咲いていなかった。
②は、紅蓮のグラデーション模様に注目して詠んだ句。
*グラデーション:色や濃淡を連続した階調(調子)
③は、白い蓮の花が、まるで緑の雲海(葉叢)の中に浮かぶように咲いている様子を見て詠んだ。「蓮華(れんげ)」は蓮の花の別称。

 


 

「蓮」は、ハス科ハス属の多年性水生植物で、原産地はインド。(エジプト、中国という説もある。)現在、様々な品種があるが、大きくは紅色・白色の花を咲かせる東洋産種と、黄色の花を咲かせるアメリカ産種の2種類に分かれるそうだ。

 


 

花期は7月~8月。花は開閉を繰り返し4日間咲く。1日目は半開まで、2日目は全開、3日目は最大に開き、4日目は朝から散り始め、午後には完全に散る。最も美しいのは2日目だそうだ。

 


 

「蓮の花」を詠んだ句は非常に多く、これまで何句か掲載したことがあるが、今回はそれ以外のものをいくつか選んで掲載した。


【蓮の花の参考句】
蓮の花何が地獄か極楽か (西郷かの女)
蓮の花遠くにばかり見えてをり (久保ともを)
しのゝめや池一ぱいの蓮の花 (窪田桂堂)
蓮の花ふつくらと夜も明けにけり (落合水尾)
蓮の花耳目しづかに眺めけり (徳永山冬子)