雨風に耐えて上向く立葵
( あめかぜに たえてうえむく たちあおい )


夏の代表的な花の一つに「立葵(たちあおい)」があるが、近辺ではあまり見られなくなった。恐らく、草丈が非常に高く、雨風に弱いせいだろう。先日行った植物園では、まさにそんな情景が見られ、暫く続いた雨で傾いているものが散見された。


 

それでも、何とか耐え抜いて多くの花を咲かせている物も多数見られた。本日の掲句は、そんな様子を見て詠んだ句である。「立葵」は。「花葵」「葵」とも言い夏の季語。


 

尚、当初は、倒れている「立葵」をコロナ禍で閉店に追い込まれた店に重ね、以下のように詠んだ。

長雨に倒れしものも立葵

しかし、あまり暗い句は好まないので、どんな場合でも太陽を仰ぎながら花を咲かせる花として、掲句のように詠み変えた。

 

 

因みに、「立葵」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 日を仰ぎ立ちてこそあれ立葵
② 下半身先ずは華やぐ立葵
③ 立葵咲く凜然と燦然と



 

①は、「立葵はやはり日を仰ぎ真っすぐに立っているのが良い」と詠んだもの。
②は、下の方から咲き始め、半分ぐらいまで咲いている立葵を見て詠んだ句。
③は、立葵の立ち姿をどう表現するか、あれこれ考えて詠んだ句。 

*【凛然(りんぜん)】勇ましくりりしいさま。  【燦然(さんぜん)】きらきらと光り輝くさま。


 

「立葵」は、アオイ科タチアオイ属の多年草で地中海沿岸などが原産。花期は6月~7月。花は一重の五弁花か八重咲き。花色は、赤・桃・黄・青紫など多彩。花径は大きいものは10cmくらいになり、茎の下から順に咲きのぼる。


 

日本には、古くから薬用として渡来。平安時代には「唐葵(からあおい)」と呼ばれ、江戸時代に今の「立葵」になったとのこと。因みに、「葵(あおい)」は、葉がどんどん太陽の方に向かうところから「あふひ」(仰日)の意でつけられたそうだ。


 

ちょうど梅雨入りの頃に咲き始め、梅雨明けと共に花期が終わることになぞらえて、「梅雨葵(つゆあおい)」という別名もある。英名は「ホリーホック」。

尚、京都の加茂神社の「葵祭」や徳川家の「葵の御紋」の「葵」は、「二葉葵(ふたばあおい)」という植物のことで、「立葵」とは全く別種のものである。


 

「立葵」を詠んだ句は結構あるが、以下に比較的好むものをいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)


【立葵の参考句】
石を置く屋根も荒磯や立葵 (古舘曹人)
立葵よぎる尾長の黒帽子 (堀口星眠)
なかほどに花先んじぬ立葵 (落合水尾)
立葵人影のなき村の昼 (西島美代子)
テニスの娘水飲みに来る立葵 (榊原弘子)