虎杖の花満ち満つる里の道

( いたどりの はな みちみつる さとのみち )


今日取り上げる「虎杖(いたどり)」という野草。子どもの頃は、春先に若い茎の皮をむいて、おやつ代わりによく食べた。


その虎杖が今、川辺や道端などで多くの花を咲かせている。ただ、花と言っても、米粒程の小さい花が、泡のように茎に纏いつくように咲く。

 


 

まことに野趣に富む花であり、あまり華やかさはないが、緑の草葉をバックに多少の潤いを感じさせてくれる。


本日の掲句は、ある田舎の道を歩いている時に、満面に花を湛えている「虎杖」の群生を見て詠んだ句である。「虎杖の花」は夏の季語。(実際には8月~10月頃に咲くので秋の季語に分類した方が良いのではないかとも思う。)

 

「虎杖」単独では、山菜を意識してか春の季語になる。

 


 

ところで、掲句の中七だが、当初は「花満ち満ちる」としていた。その方が、下五の「里の道」の「道」とも響きあう。(以下は古語文法に関するもので興味のない方は飛ばして読んで頂きたい。)


しかし、念のため辞書で調べて見ると、「満ちる」の古語は「満つ」でタ行上一段活用。その連体形は「満つる」となる。従って、中七は「満ち満つる」と修正した。

 

*雄花


 

このように、俳句を作っていると、古語と口語が入り混じり、時々分からなくなることがある。そこで、簡単な言葉でもなるべく辞書で確認し、活用などを調べるようにしている。


ただ、最近は、口語の文語的使用や文語の口語的使用などが入り乱れてきており、一概にどれが正しいとは言えない状況になってきている。

 

*雌花と果実


 

話は戻って、「虎杖」に関しては、5年ほど前に以下の一句だけ詠んでいる。


ぼぅぼぅぼぅ虎杖の花咲きこぼる


これは、ある河原の土手に繁茂している虎杖を見て詠んだ句。


 

「虎杖」は、タデ科ソバカズラ(イタドリ)属の多年生植物。日当たりのよい山野などに生える。花期は8月~10月頃。雌雄異株で雄花と雌花がある。花色は白色または淡紅色で、花穂にたくさんの小花をつける。


若い茎は柔らかく、山菜として食べられる。また、若葉を揉んで擦り傷などで出血した個所に当てると多少ながら止血作用があり、痛みも和らぐとされる。これが「いたどり」という和名の由来にもなっている。(異説あり)

 


 

漢字の「虎杖(こじょう)」は漢名で、茎が真っ直ぐに伸びて「杖」のようであり、若い芽にある紅紫色の斑点が、「虎」のまだら模様の皮に似ているところから付けられたそうだ。

 


 

「虎杖の花」を詠んだ句は少ないが、ネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。(過去に掲載した句を除く。)

【虎杖の花の参考句】
いたどりの花に有情の紅すこし (青柳志解樹)
虎杖の花の蜂起に道仏 (上田五千石)
虎杖の花の散りこむマンホール (岡本眸)
虎杖の花を銜へて小鳥来る (佐々木六戈)
虎杖の花に風立つ中尊寺 (高村俊子)