凌霄の雨に冷たき落花かな 
( のうぜんの あめにつめたき らっかかな )
 
最近、家の壁、土塀などを伝って、あるいは他の木に巻きついて、オレンジ色の派手な花を咲かせている植物をよく見かける。名前は、凌霄花 (のうぜんかずら)という。
 
昨日、その花が、おりからの雨のせいで、沢山散っているの見た。この花はラッパ状の花で、椿のように花の形のままで散る。だから、散るというよりも落花と言った方が相応しいだろう。
 
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掲句は、そんな情景に出会い詠んだ句である。中七は当初「冷たき雨の」としていたが、やや平坦に感じ、「雨に冷たき」として少し視線を落花に向けてみた。「のうぜんの花」は、「のうぜん花」「のうぜん」「凌霄花」などとともに、夏の季語。
 
因みに、のうぜんの花に関しては、これまで何句も詠んできたが、比較的にましなものを以下に掲載する。
 
【関連句】
① 名は似れど映画にゃならぬ のうぜんかずら
② のうぜん花 嬉々として咲き楚々と散る
③ 華麗なるシャンデリアかな凌霄花
④ 街角の華燭の花よ凌霄花
 
①は、「のうぜんかずら」が、映画にもなった「あいぜんかつら(愛染かつら」と語呂が似ていると思い詠んだ句。②は、花の咲きっぷりが派手で、散る時は花のままそっと散るのを見て詠んだ句。③は、花の咲く様子をシャンデリアに、④は華燭(燭台の灯)に喩えて詠んだ句。
 
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凌霄花は、ノウゼンカズラ科ノウゼンカズラ属の落葉つる性落葉樹。中国原産で平安時代に渡来したといわれている。花期は6月~9月。ラッパ状で橙色の花で、花弁の先が5ツに不規則に裂けている。
 
名前の「のうぜん」は、漢名の「凌霄」の読み「のうせう、のせう」が「のうぜん」に転訛したもの。「かずら」は、蔓性の植物を表す。漢名については、「凌」には「しのぐ」の意味が、「霄」には「遥かかなた空の果て」の意味があり、空に向かって高く咲く花ということでつけられたとのこと。
 
【凌霄花(のうぜん花)の参考句】
家毎に凌霄咲ける温泉かな       (正岡子規)  *温泉(いでゆ)
凌霄花の朱に散り浮く草むらに     (杉田久女)
凌霄や長者のあとのやれ築土     (芥川龍之介)
凌霄花落ちてかかるや松の上     (山口青邨)
凌霄花したたか浴びし朝雫        (能村登四郎)
 
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