雨上がり青梅の尻の美しき
( あめあがり おうめのしりの うつくしき )
 
梅雨入りしてから、雨は降ったり止んだりの天候が続いている。今朝もどんよりした天気だったが、雨は止んでいたので近辺の散歩に出かけた。その道すがら、ある家の前に差し掛かると、梅の青い実が木全体に生っているのが見えた。
 
本日の掲句は、その時の様子を詠んだものだが、昨日の雨の滴が青梅(あおうめ)に垂れていて、何とも艶っぽい感じがした。「青梅」は「おうめ」とも読み、夏の季語。
 
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ところで、掲句では、青梅の姿を「青梅の尻」と表現したが、これは、明治の詩人、小説家である室生犀星が詠んだ、以下の句を参考にしている。
 
青梅の臀うつくしくそろひけり 
*臀(しり)
 
この句の「青梅の臀」という表現が実に印象的で、青梅を見ればこの句を思い出し、そこからなかなか抜け出せない。実際に、その句を知った以降、以下の句を詠んでいる。
 
【関連句】
① 青梅の尻のまろきに梅の雨
*青梅(あおうめ)
② 青梅尻桃尻よりもまろきかな 
*青梅尻(おうめじり) *桃尻(ももじり)

①は、青梅に梅雨の梅をかけたもので、季重なりの句。②は、青梅の尻と桃の尻を比べて詠んだもの。ただ、今日店に出回っている桃は結構丸いので、一概にどちらが丸いとは言えなくなったが、かつては、細長いものや先がとがったものもあった。
 
関連して、余談になるが、「桃尻」という言葉を辞書でひくと「桃の実の尻(実際は頭)が、とがっていてすわりの悪いところから、①馬に乗るのがへたで、尻が鞍の上に安定しないこと。②尻の落ち着かないこと。」という説明がなされている。

確かに、昔話の桃太郎に出てくる桃は先がとがっている。ネットで調べたところ、「天津桃」というそうだが、硬くてあまりおいしくないので、いろいろと品種改良がされ、今の丸い桃にとって代わられたとのこと。

「桃尻」といえば、かつての日活映画や官能小説に出てくる「桃尻娘」の「桃尻」を連想してしまうが、別の意味があることを覚えておきたい。尚、「青梅尻」というのは、造語で辞書には載っていない。
 
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話を元に戻すが、青梅とは、梅の実の中でも、まだよく熟さない青くて硬い梅の実のことをいう。これが黄色に熟したものについては、特に「実梅(みうめ)」「黄梅(こうばい)」といって使い分けることもある。これらは、おおむね晩春から初夏にかけて収穫され、梅干しや梅酒、梅酢などの原料になる。
 
【青梅の参考句】
青梅や餓鬼大将が肌ぬいで (小林一茶)
青梅の葉蔭に見ゆるほどになんぬ (村上鬼城)
青梅を落としし後も屋根に居る  (相生垣瓜人)
青梅の育ち盛りの児のごとし (村越化石)
青梅を落し終へたる城址かな 
(大串章)  
 
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