満天星や地上の星は揺れてあり
( どうだんや ちじょうのほしは ゆれてあり )
 
満天星は、「どうだん」あるいは「どうだんつつじ」と読む。壺型の花をつける躑躅(つつじ)の一種だが、疏水沿いに植えてある木は今満開となっており、その名の通り、空一杯に星がちりばめられたように咲いている。
 
本日の掲句は、それを見て詠んだもの。そのまま読めば何の変哲もない写生の句だが、最近話題になっているある事件に重ねて詠んだ句でもある。ある事件とは、お気づきの方もいると思うが、あの「STAP細胞論文問題」である。

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掲句で使った「地上の星」は、2000年~2005年にNHKで放送されたドキュメンタリー番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」の主題歌で、中島みゆきが歌った歌曲のタイトル。その歌詞の中で、彼女は、「人知れず大きな偉業を成し遂げた、無名の戦士」を「地上の星」と言った。

ところが皮肉なことに、今回の事件では、「STAP細胞」の作製に成功したという小保方氏が一気にリケジョ(理系女子)の星として祭り上げられ脚光を浴びた。そして、その論文に不正があると分かるや、方々から徹底的に叩かれ、今もその衝撃は治まらず揺れている。

論文の不正は、科学者としては許されないレベルのようだが、もっと慎重にじっくりと発表すれば、輝く「地上の星」になりえたはずなのに、返す返す残念である。今となっては、科学・医療の発展に役立ちたいという彼女の情熱だけは信じたい。そして、できれば「STAP細胞」が現実にあることを願いたい。

話は大分横道に逸れた感じがするが、満天星については、過去にも何句か詠んでいる。比較的ましなものとしては以下の句がある。「満天星の花(どうだんのはな)」「満天星躑躅(どうだんつつじ)」は春の季語。

季節はめぐり満天星の花
( きせつはめぐり まんてん ほしのはな )

満天星は、ツヅジ科ドウダンツツジ属の落葉低木である。花期は、地方によって違うが4月上旬~5月中旬頃。花は、白色の釣り鐘のような感じで、5mm程の大きさ。漢字では満天星躑躅、灯台躑躅とも書く。

ツツジといえば、あの赤紫やピンク色の花を咲かす植物を連想するが、ツツジ科の植物は、約100属1350種もあるそうだ。色鮮やかな花を咲かすツツジやサツキなどはツツジ科ツツジ属、満天星によく似た花を咲かす馬酔木(あせび)もツツジ科でアセビ属に分類される。
 

【満天星の参考句】
この露地のあかるきは満天星の咲きにける (水原秋櫻子)
やまとことばの夫人らと立って満天星 (阿部完市)
灯ともせば満天星の花をこぼしつぐ (金尾梅の門)
満天星の花韻きあふ雨雫 (柴田白葉女) 
*韻き(ひびき)
いつせいに咲き満天星の千の花  (鷹羽狩行)

 
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