■ 由布(岳) 二句
 
雪晴れの由布に棚引く湯の煙
( ゆきばれの ゆふにたなびく ゆのけむり )
由布暮れて凍て星を見ゆ露天風呂
( ゆふくれて いてぼしをみゆ ろてんぶろ )
 
5日より2泊3日の九州旅行に行ってきた。本日より3日間、その旅行先の紹介をかね、旅中に詠んだ句をいくつか掲載したい。

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初日に行ったのは、大分県由布市にある由布院温泉(ゆふいんおんせん)で、途中近くの街を散策した。この町は由布岳(ゆふだけ)を中心とした1000m級の山々に囲まれた盆地にあり、絵画やガラスの美術館が点在するアートと温泉の街で知られている。歓楽街を廃した街で、軽井沢のような落ち着いた雰囲気があり、女性に大変人気があるそうだ。

本日掲載の第一句は、この街から綺麗に見える由布岳を眺めながら詠んだ句である。現地に行った午後2時過ぎ、頂上は厚い雲に覆われていたが、次第に雲が薄らいできて、薄っすらと雪を被った頂上の姿が見えてきた。それと麓に棚引く温泉の湯けむりをあわせて詠んだのが掲句である。季語は「雪晴れ」で冬。

第二句は、湯布院温泉の宿泊先で詠んだ句で、露天風呂に浸かりながら詠んだ句である。由布岳は暗くて見えなかったが、その方角に煌々と輝く星がいくつも見えた。季語は「凍て星」で冬。

因みに、由布岳は、頂上が東峰と西峰(標高1,583m)の2つに分かれている活火山。きれいな円錐形をしていることから、豊後富士とも称されている。また、古来より信仰の対象として崇められ、『古事記』や『豊後国風土記』にもその名が記されているとのこと。多くの俳人が訪れ句を詠んでおり、俳枕の一つになっている。
 

【由布岳の参考句】
大夕立来るらし由布のかき曇り (高浜虚子)
由布聳え温泉邑をちこち梅をちこち (富安風生)
由布に雪来る日しづかに便書く (橋本多佳子)
秋天に神の彫たる由布二峰 (田村木国)
大由布の二つの峰の秋の晴 (倉田紘文)

 
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