枯れすすき 昭和は遠く なりにけり

上句は、いうまでもなく、下記の中村草田男の名句を模したものである。
 
降る雪や 明治は遠く なりにけり  
 
この句は、昭和6年(1931年)大学生だった草田男が母校の小学校を訪問した際に生まれた句だそうだ。降りしきる雪の中で、時と場所の意識が空白となり、現在が明治時代であるかのような錯覚と、明治時代が永久に消えてしまったとの思いが同時に強まった、そんな感慨を詠んだと言われている。
 
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さて自分の場合はどうかというと、枯れすすきを見て、そういえば、「昭和枯れすすき」という歌があったなあ。昭和と言えば、来年が平成24年だから、昭和時代が終わってもうすぐ丸23年になるんだなあ。そんな感慨が湧いてきて、上句のように詠んでみた。
 
このように詠んでみて、昭和が急に懐かしくなり、本棚にあった年表を広げて見た。昭和4年:世界大恐慌の発生、同12年:日中戦争開始、同16年:太平洋戦争勃発、同20年:太平洋戦争終戦、同26年サンフランシスコ平和条約調印、同39年:東京オリンピック開催、同45年:日本万国博覧会開催、同47年:沖縄施政権返還、日中国交樹立、同64年(1989年):昭和天皇没、平成元年。そして平成3年(1991年)あたりのバブル経済の崩壊へと続く。
 
昭和時代というのは、その初めは暗いどん底の時代だったが、戦後はそこから何とか這い上がり、高度経済成長の中で将来に夢を見た時代でもあった。しかし、その夢はバブルであり無残に弾けて、今に至っても先が見えない状況が続いている。
 
ここで改めて上句を見ると、「昭和は遠くなりにけり」には、そういう昭和の夢が崩れたことへの感慨が含まれ、「枯れすすき」がその象徴のように見えてくる。ただ、「枯れすすき」といえども、春には必ず新たな芽を出し、夏には緑の葉を広げる。そのことに今後の希望を託したい。
 
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