いつからが老後なのやら小判草

( いつからが ろうごなのやら こばんそう )

 

先日、久しぶりに歩いた小道の横には、様々な草が、これでもかとばかりに繁茂していた。夏草の生命力の強さには今更ながら驚かされた。そんな草叢のある一画を見ると、懐かしい「小判草(こばんそう)」が、その名の通り、小判のような色と形の穂を揺らしていた。

 


 

本日の掲句は、そんな情景を見て詠んだものだが、「小判」→「お金」→「老後」という連想でできた句である。「小判草」は夏の季語。

 

ところで、数十年前まで60歳定年が当たり前で、老後は60歳以降と思っていたが、ここ10年ほどで考え方が一変し、65歳あるいは70歳以降とどんどん先延ばしにされている。それは、もっぱら、人の寿命が延びたおかげなのだが、長く生きるには、そのためのお金がいる。

 

はてさて、どれくらい生きることを念頭に働き、蓄えておくべきか。なかなか悩ましい。

 

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少し話は横道にそれるが、厚労省が発表した2017年の平均寿命は男性で81.09歳(世界第3位)、女性で87.26歳(世界第2位)。


約100年前の1921年が男子42歳、女性43歳。終戦から15年経過した1960年で男子65歳、女子70歳だから、現在の水準が如何に高いかよく分かる。

 


 

また、1960年代には、多くの企業が55歳定年退職制を採用しており、定年後10年ほどが老後と考えられていたものと思われる。


現在は、定年年齢の65歳引き上げが推奨されているが、平均寿命までは15年以上もある。なかなか難しいことだが、少なくとも長寿が不幸を招くなんてことがないように願いたい。

 


 

話は戻って、「小判草」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 笹あれば商売繁盛小判草
② ジャラジャラと金をばらまけ小判草 
(原句を一部修正)

③ せこすぎて切なく揺るる小判草

 


 

①は、福笹(笹に大判、小判などの細工物を結びつけたもの)で、商売繁盛を願う十日戎(とうかえびす)にかけて詠んだもの。
②は、もっと金をばらまいて景気をよくしてほしいと詠んだもの。もっとも、ばらまけば景気が良くなるのかというと、そう単純にはいかないようだが。
③は、前の東京都知事が辞任する前の会見を見て詠んだもの。今日であれば、日産・ルノーのあの方か?それにしても動いた金の大きさが違い過ぎる。

 


 

「小判草」は、イネ科コバンソウ属の一年草。ヨーロッパ原産で日本には明治時代に観賞用に導入された。5月~7月に茎の上部に数個の小穂ができ垂れ下がる。


この小穂は、当初淡い緑色で成熟すると黄金色に変わり、光沢があって見ようによっては美しく、名前はこれを小判に見立てて付けられた。別名に俵麦(たわらむぎ)があるが、これは膨らんだ小穂の形を俵に見立てたもの。

 


 

「小判草」を詠んだ句はままある。以下には、ネットで見つけた句をいくつか掲載した。(過去に掲載したものを除く。)


【小判草の参考句】
木洩日に狐色なす小判草    (堀口星眠)
漁村昼寝風に鳴るのは小判草 (伊丹三樹彦)
掌に受けて小判軽しや小判草 (谷口雲崖)
舟を待つ夕日の色に小判草   (浜福恵)
少年に果てなき渚小判草     (茂里正治)