木漏れ日の水面に光る水芭蕉

 ( こもれびの みなもにひかる みずばしょう )

 

南信州日帰りバスツアーの午後は、「ヘブンスそのはら」に行き、「水芭蕉(みずばしょう)」などを見てきた。こちらは、長野県阿智村にあるスキー場で、スキーシーズン以外はロープウェイやリストで新緑や紅葉などの山景を楽しんだり、トレッキングや山野草の観察などができる。

 



当日は、新緑の方はまだだったが、「水芭蕉」の方はかなり咲いていた。いくつかの群生地があり、特に「いわなの森」という森林の川辺に咲いているものが印象的だった。

 

 

本日の掲句は、その様子を詠んだもの。木々の葉から漏れる日を受けて、水芭蕉の白い仏炎苞(ぶつえんほう)が光って見えた。

 


 

ところで、「水芭蕉」は、「夏の思い出」という歌に出てくることでよく知られている。だから「水芭蕉」は夏の花だと思っておられる方が多いと思う。


しかし、これは半分間違っている。実際のところ、水芭蕉の開花時期は、低地では春の4月から5月、高地では夏の5月から7月だそうだ。

 


 

「夏の思い出」に出てる尾瀬は高地なので、水芭蕉が咲くのは5月末頃からで最盛期は6月頃。だから咲くのは夏で間違いない。


尚、季語としては夏に分類されているようだが、平地に合わせて春に分類する歳時記もあるとのこと。

 


 

水芭蕉は、サトイモ科ミズバショウ属の多年草。原産地はシベリア東部、サハリン、日本など。日本では北海道と中部地方以北の本州の日本海側に分布し、主として湿地に自生する。

 


 

発芽直後に葉間中央から純白の「仏炎苞」と呼ばれる苞が開く。これは、一見すると花に見えるが葉の変形したもので、仏像の背景にある炎形の飾りに見立てて名付けられた。本当の花は、その中央に見える円柱状の部分で、小花が多数集まっている。


「水芭蕉」の名前は、花の後から生える葉が「芭蕉」に似ており、水辺に生えることに由来する。

 


 

「水芭蕉」に関しては多くの俳人が句を詠んでいる。以下には、その中からいくつか選定し掲載した。(過去に掲載したものを除く。)


【水芭蕉の参考句】
花と影ひとつに霧の水芭蕉  (水原秋桜子)
隠り沼をふちどる花の水芭蕉 (能村登四郎)
峠にはまだ雪消えず水芭蕉  (滝井孝作)
湿原のひかりの翼水芭蕉  (森田博)
水芭蕉水面に山の影重ね (宮崎要子)

 

*珍しい「黄花水芭蕉」