わびさびは未だ分らず利休梅 

( わびさびは いまだわからず りきゅうばい )

 

桜の花もかなり散ってしまい、今は花の名残りのように、その屑が道路に散乱している。観光客で溢れていた通りも、今は疎らになり些か寂しい感じがする。そんなおり、近くの神社へ行くと、「利休梅(りきゅうばい)」が、今が盛りと咲き誇っていた。

 


 

本日の掲句は、そんな「利休梅」を見て詠んだ句である。花の名前にある「利休」からの連想で「わびさび」という言葉が浮かび、そう言えば、この「わびさび」というのは未だ分からないなと詠んだもの。尚、「利休梅」は丁度今頃から満開になるので、春の季語だとよく勘違いするが、夏の季語に分類されている。

 

 

因みに、「利休梅」につていは、過去に以下の句を詠んでいる。


 【関連句】
  ① 手水舎に咲き零るるや利休梅
  ② 喧噪も絶えて社の利休梅

 


 

①は、ある神社の手水舎(ちょうずや)の近くに咲いていた「利休梅」を見て詠んだ句。
②は、桜が散り観光客も疎らになった時期に、①と同じ神社の「利休梅」が咲き誇っているのを見て詠んだ句。

 


 

ところで、この「利休梅」が茶の湯の「千利休」とどんな関連があるのか。かつて記事にしたことがあるが、参考まで再掲したい。

 


 

●「利休梅」は中国から日本に渡来したが、それは明治時代のこと。したがって、年代的に千利休が愛でたということはなく、直接的な関係はない。

●何故この名がついたのかは明確に分からないが、利休が亡くなった時期(旧暦2月28日:現在の3月から4月)に花が咲くこと、千利休が愛用した茶器を入れる袋=仕覆(しふく)の「梅の紋様」がこの花にそっくりなことに由来するなどの諸説がある。


何とも曖昧な名前の由来だが、花の咲き具合が派手すぎず、地味すぎないということでは、日本人好み、特に茶人好みであることは間違いないだろう。

 


 

「利休梅」は、バラ科ヤナギザクラ属の落葉低木。中国の中北部が原産で、日本には明治時代末期に渡来。花期は3月~5月頃。五弁の花なので、遠くから見れば梅のようにも見えるが、花径は梅よりも一回り大きく、梅独特の細長い蕊がなく、花弁もやや細長い。梅とはかなり雰囲気が違う。


漢字では、利久梅と書くこともある。別名で、「梅咲き空木(うめざきうつぎ)」、「梅花下野(ばいかしもつけ)」とも呼ばれる。

 


 

「利休(久)梅」に関する句はあまり見られず、以下には、ネットで辛うじて見つけた句を参考まで掲載した。

 

【利休(久)梅の参考句】
利休梅病惰をつひの性としぬ (石田波郷)
利久梅水仕にたちて女流ゐず (上田五千石)
利休梅活けたり梅の軸かけて (山口青邨)
白をもて人にたてつく利休梅  (後藤比奈夫)
利久梅松風に白かげりけり   (大熊輝一)