ずっと以前、マウスに高脂肪食を与えたら、がんが増大した、という論文が発表されて騒がれたことがあります。その論文の末尾は「ケトン食ががんを促進した」となっていました。しかしケトンに詳しいある研究者がその論文を詳細に調べたら、その研究でマウスに与えた高脂肪食は、ショートニング(トランス脂肪酸)だったのです(その後、アメリカではトランス脂肪酸は禁止になっています) その反対にオメガ3やオリーブオイルを与えた(マウスでの)高脂肪食が、がんの成長を抑制したという論文はたくさんあります。
がんは炎症を好み、炎症を利用して増大します。がんは進行してくると全身に炎症を引き起こし、宿主の筋肉を分解させ、そのタンパク質(アミノ酸)を肝臓でブドウ糖に変え(糖新生)がん自身のエネルギー源にします。がんで筋肉痩せ(悪液質)するのはこのためです。なので、がんがショートニングなどの炎症性脂質を好むのは、別におかしくないと思います。
一部引用要旨:最近の研究では、がんは脂質を栄養として利用して成長を早めたり、転移を促進していることがわかりました。研究によって、転移するがん細胞は脂肪をエネルギー源として利用している可能性が示されたというニュースです。(同時に)脂肪酸の種類によってがんのリスクが左右されることがわかっています。がんの発生や転移を促す可能性がある脂肪酸を3つ紹介したいと思います。1.飽和脂肪酸(バター、肉の脂身、ラードなど 2.トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング 3.オメガ6脂肪酸(サラダ油、ヒマワリ油、コーン油、大豆油、ごま油などの炎症性油)~ここまで
(ただし、私は飽和脂肪酸に関してはグラスフェッドならば大丈夫なように思います。でも正直なところ、飽和脂肪酸に関してはよくわかりません)
そして次の記事は世界最大のがん学会のASCO(米国腫瘍学会)で報告された内容です。査読はまだ受けてないようですが、この学会は審査が厳しく、この場で報告できるだけでも非常に狭き門なのだそうです。
一部引用:魚油カプセルを用いた高オメガ3脂肪酸、低オメガ6脂肪酸の食事指導が、積極的監視療法下の前立腺癌患者に対し、がんの増悪や転移を反映するとされているKi-67値を、対照群と比べて減少させる可能性があることが分かった。介入群(44人)は、オメガ6脂肪酸が多い食物(コーン油や揚げ物など)の消費量を減らして、オメガ3脂肪酸が多い食物(サーモン、ツナなど)の摂取を増やし、オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の摂取比が4:1以下になるよう指導されたほか、魚油カプセルでエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)を1日当たり2.2g摂取した。対照群(47人)は、魚油を摂取しないよう指導された。(がんの増悪や転移を反映するとされている)Ki-67値について、介入群ではベースラインの1.34%から1年後には1.14%となり約15%減少していたが、対象群ではベースラインの1.23%から1年後には1.52%となり約24%上昇していた。両群間で統計学的に有意な差が認められた。
この結果からも、私にはがんが抗炎症性の脂質(オメガ3など)を好むとはとても思えません。これらを摂取して炎症を抑えたら、がんは自滅の方向に向かうはずだからです。むしろがんはオメガ3を嫌い、避けるのではないでしょうか。またケトン体にも(炎症を惹起する)NLRP3インフラマソームを抑える作用があります。
私は、炎症をできるだけ抑えることがとても重要だと、今でも思っています。