今から8年ほど前のある朝、私は血尿が出て驚いたことがあります。便器の中が赤く染まっているのです。痛みは感じ無かったけど・・その前日に、急坂が多い西沢渓谷(山梨県)をかなり歩いたので、たぶんその疲労のせいかな、とも思いました。ただ、私の兄弟や叔母が透析患者だったので、私自身もいずれそうなるのではないか、とすごく不安になったものです。その数年前から尿路(腎)結石の予防目的でクエン酸水は飲んでましたが、だんだん面倒になり、血尿が出たころにはクエン酸はほとんど飲んでなかったです。あれはかなり酸っぱいのです。ただ、血尿はすぐにおさまり、それ以降はそういうことはなかったです。

 

血液中のPH値(アルカリ性、酸性)は通常は7.4前後に厳密に保たれています。ただ、ケトン体は元々は酸性なので、それにより血液が一時的に酸性に傾くと(体は)腎臓から重炭酸イオン(アルカリ)を血液中に放出して酸を中和したり、肺による呼気(吐く息)で二酸化炭素(酸性)を吐き出したり(緩衝系)、尿から体内の過剰な酸性物質(利用されずに余ったケトン体やリン酸など)を排出し、血液中の酸性とアルカリ性のバランスを一定に保ちます(酸塩基平衡)この時に排出される尿は酸性寄りになるので、尿路(腎)結石が出来やすくなることがあります(あれはかなり痛いそうです)  私はケトン食を始めた12年くらい前からこのことは聞いていたので、念のためにクエン酸水をある程度飲んでいました。ただし誤解しないで頂きたいのは、この場合はケトン体そのものが悪い訳ではなく、ケトン体が利用、代謝できない(使い切れない)状態が長期に続くことが良くないということです。ケトン代謝に体が慣れてきて(スムーズになり)体内での利用率も高まってくれば余剰なケトン体も減るので、そのような状況にはなりにくいと思います。それに酸性物質が悪いのならば、クエン酸(酸性)を多く含む柑橘類や梅干しなどもすべて体に悪いことになってしまいます。クエン酸は体内ではアルカリ性に変わります。また血液はアルカリに傾きすぎても危険なのです(アルカローシス→ふらつき、錯乱、失神など) 重要なのは血液中のPH値が常に7.4前後に維持されてることであって、実際に私はこれまで一度も尿路(腎)結石にはなっていません。

 

しかし血尿から4年後、ずっと順調だった私の腎機能を現わすクレアチニン値(男性基準値0.61~1.04mg/dLくらい)が少しずつ上昇してきたのです。その後も上昇は続き、ついには定期検査で基準値を飛び越えてしまいました(当初0.69→1.07→1.17)主治医からは次回の検査もこのままだったら、腎臓内科に紹介すると言われ、私は焦りました。自分の兄弟や叔母の腎臓が悪化していく様子を間近で見て知っていたからです。もし、自分も同じようになったらどうしよう・・ケトンでも遺伝体質は変えられないのか、とかなり不安になったものです。

 

でもそれから私は腎臓病について徹底的に調べ、試行錯誤を繰り返しました。野菜は必ず煮こぼしてから食べたり(カリウム除去)、コーヒーを飲む量を1日3杯までに減らし(それまではバターコーヒーを1日10杯以上飲んでいた)牛乳を少し加えてミルクコーヒーにしたりもしました(シュウ酸対策)クエン酸水も本格的に再開し、重曹水も分けて飲むようにして、毎朝の尿PH値もキッチリと測り、アルカリ寄りを目指しました。ただ、私の場合は重曹の方が尿PH値がアルカリになったようです。それらのうちの何が良かったのかわかりませんが、次の検査ではクレアチニンがかなり下がっていました(1.17→0.74)今から4年前のことです。

それからクレアチニン値は基準値内を上下したりでしたが、先月の健康診断では2年連続でクレアチニン値が最低基準値を下回るほどまでに戻りました。
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たとえ加齢現象でこれから再び少しずつ上がったとしても、もうすぐ65歳の私は、透析から一生逃げ切れそうです。

 

私はすでにがん患者ではなく、遺伝性の腎臓病もなんとか克服できました。闘病記としてのこのブログの意味も薄れてきたようです。

でも私はこれまでブログを通して、多くの方々と知り合えて励まし合ったり、たくさんのことを学ばせていただきました。そして、ぽんぽこさんのように、余命宣告3~6ヶ月の膵臓がんから奇跡的な大逆転を実現され、5年後の現在も元気で順調な方もおられます。他にも厳しい状況から無事に卒業されていった方達も結構いらっしゃるのです。

でも悲しいお別れもありました。皆さん一生懸命頑張られて、ほとんどの方々がクオリティーも高く、余命の中央値よりも長く生きることが出来ましたけど、最後は旅立たれてしまいました。私はブログから離れたくなりました。しかしまた、ご遺族の方々から感謝のご連絡をいただいたことも数度ありました。ある時には、40代のご主人を亡くされたばかりという、ある女性からの突然のご連絡があり「がんになってから数年、治療法もないと言われ、たくさん悔しいこともありましたが、主人は亡くなる半年前まで好きだった海で過ごすことも出来て、ケトン食をしてきたことに後悔はございません。長い間ありがとうございました」とご連絡いただいた時には、心がやすらいだものです。

 

私の妻は9年近く前にヘルペス脳炎で突然他界しました。運悪く子宮内膜炎も併発していたので、ダメージも多く、担当医からも治療法がわからないと匙を投げられ、しまいには他の病院をたらい回しにされました。このブログには、あの時妻を助けてあげられなかった果てしない私の無念が・・ もう一度やり直したかった・・という執念のような強い想いがあったように思います。

でも私ももうすぐ65歳です。そしてもう闘病者ではありません。コロナやインフルも平気で、歯も丈夫です。これまで糖質制限ケトン食を実践してきて正解だったと思っています。ただ、糖質制限に限らず、病気を遠ざける重要なポイントは、やはり慢性炎症を抑えることにあったように思います。これからも皆さんのご健勝を心から願っています。