荒川祐二&Teamスサノオで~す☆







『旅の終わり』。

 

いよいよこの時がやって来た。







『伝説の女神』瀬織津姫の待つ、


早池峰神社 奥宮へと僕らは足を向ける。



足を深い雪に沈めながら、

 

日常では考えられないぐらいの、


重たい足取りで、一歩一歩前へと足を進める。




長く苦しい、この早池峰山の道のりも、


しかしこれまで瀬織津姫が歩んできた長い受難の歴史を思うと、


比べものになるほどのものではなく、



この最後の試練の道のりを経験し、


克服することこそが、



『謎多き女神』瀬織津姫に対する、


『正しい理解』の最後の関門のような気がした。







あ「はぁ、はぁ…あと一歩、あと一歩…」



呪文のように言葉を繰り返し、

 

自分自身を鼓舞しながら、



時折瀬織津姫の鎮まる、


冬の早池峰山の景色に心を奪われ…。







そうして自分との闘いが続く中、

 

総合計12時間以上という道のりを越えると、

 

そこに…?








あ「…こ、ここが…?奥宮…?」







幻想的な景色とともに、


『早池峰神社 奥宮』がその姿を、


深い雪に包まれながら現した。





あ「…す、すごすぎる…」






水の女神、滝の女神、桜の女神…。

 

この世の美しさを体現するかのような、

 

女神が最後に選んだその場所は、



『伝説の女神が住む世界』として、

 

あまりにふさわしすぎる光景だった。





…これでもう…この旅が終わる…。





…しかし、不思議と涙は流れてこなかった。





それよりも今は使命感の方が大きく、


何より瀬織津姫と交わした約束を、


僕は守らなければいけない。





そうして改めて深い雪で閉ざされた、

 

『早池峰神社奥宮』の前に立ち、参拝。





長い人の歴史に翻弄された、

 

『伝説の女神』瀬織津姫へと、

 

思いを馳せる。








…しかし…。


…瀬織津姫は姿を現さない…。







あ「え…?


ど、どうして…?」







…予想外の出来事に、

 

頭の中が一気に混乱し始める。

 

 

『なぜ?どうして?』、

 

そんな思いが脳裏を目まぐるしく駆け巡った。








あ「…こ、ここまで、来たのに…?」




突如として、

 

この旅を始めた時からの記憶が、

 

まるで走馬灯のように甦った。





…どこかで僕は瀬織津姫に対する、

 

重大な認識違いをしてしまっているのかもしれない。





…しかし、

 

遠野の伊豆神社で瀬織津姫の化身である、

 

『おないさん』にお会いした時は、そんなことはなかった…。





おないさんは、僕に言ってくれた。

 

『瀬織津姫様も心待ちにしています』と…。







…では、なぜ?

 

今の僕に何が足りない…?







…これまでの半年間の道のりがすべて、

 

ここで台無しになってしまうかもしれないという恐怖が、黒雲のように心を覆い始め、


頭を抱えそうになったその時だった…。





天から言葉が聴こえてくるように、

 

フッと疑問が湧いてきた。








『瀬織津姫は不幸な神なのか?』と。









あ「え…?」







『瀬織津姫は不幸な神なのか?』




一度出たその疑問が、

 

苦しみで埋まりかけた心を祓い、

 

次第に僕の心を覆い尽くした。





この早池峰山に入るまで、

 

僕は瀬織津姫が歩んできた、

 

 

役行者さん、おないさん始め、

 

多くの人々が瀬織津姫を守るために、

 

繋いできた歴史の裏側に感動すら覚えていた。





…しかし同時に僕は、

 

かつて全国7割以上の神社で祀られていたというほどの、

 

絶大な力を持っていた瀬織津姫が、

 

 

人の歴史の都合によって、

 

そんな歴史の裏側を歩まざるを得なかったこと、

 

 

それを、何度か『受難』の歴史と呼んでいた。





そして実際に早池峰山に入ってからも、

 

山頂までの長く苦しい道のりを乗り越え、経験することが、

 

『辛い歴史を歩んできた』瀬織津姫に対する、

 

『正しい理解』の最後の関門だと思っていた。







…その認識が、

 

間違ってしまっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

かわいそうか、かわいそうでないか。

 

受難か、受難でないか。

 

 

そんなことは決して僕が判断することではなく、

 

そんなフィルターが時を経て積み重なるからこそ、

 

 

人も神も、真実の姿が見えなくなってくる。

 

 

 

 

本来僕らがしなければいけないことは、

 

『あるべきものをあるべき形で知り、ただ伝えること』。

 

 

 

 

そこに『かわいそうか、かわいそうでないか』、『受難か、受難でないか』、

 

そんな主観という僕の勝手なフィルターを掛けて、

 

誰かに伝えるようなことはしてはいけない。

 

 

そこから何を知り、どう判断していくかは、

 

それぞれが決めること。



それが、


それぞれが『自分軸で生きる』ということだから。







…そう思えたその瞬間に、


ざわついていた心が落ち着きを取り戻した。







今ならいける。







…そう思い、

 

再び瀬織津姫が鎮まる奥宮を見る。










…そして…。










美しく、輝く早池峰山の山頂に、

 

『伝説の女神』瀬織津姫が、

 

その姿を現した。

瀬織津姫「…ようこそ…、

 

ここまで…おいで下さいました…」






あ「うっ、うっ…」






…『瀬織津姫』。



最高神 天照大神にも勝るとも劣らないご神威を誇る…伝説を歩んできた女神…。



…いや…すべてを包み込んでくれる、


アマテラスさんの持つ『太陽』のご神威とは、


全く質が違う…。





まるで自分自身の持つこれまでの過去をすべて洗い流し、



赤ん坊の頃のように純粋で、

 

まっすぐな心を思い出させてくれる、


優しく、柔らかく、清らかな『水』のご神威…。





『瀬織津姫の謎を解く…』、『その封印を解く…』。





この女神を前にするとそんな言葉すらもおこがましく思えて来て、僕は自然と頭を下げた。







そんな僕に瀬織津姫はゆっくり微笑みかけ、

 

透き通る清水のように、美しく澄み切った声で語りかける。







瀬織津姫「…この旅の一部始終…、

 

ずっとずっと見ていました…。

 

悩み迷いながらも、

 

今日に至るまで歩まれてきたこと…。



…その歩みが…、私は…嬉しい…。

 

こんなに愛して…頂けて…、

 

…私…以上に…幸せな存在が…いるので…しょうか…







…言葉の途中から…、

 

…瀬織津姫は泣いていた…。






…まるで穢れを知らない少女のように、


ゆっくりと両手で顔を覆って泣いていた。





あ「…どうして…涙を…?」





瀬織津姫「…永い、永い、歴史の流れの中で、


たくさんのことがありました…。



時に、祭神変更に頑強に抵抗し、


私のために命を落とした方…。


私を匿い、表に見えぬ形で守ってくださった方々…。



そうして今この現代でも…私を愛し…、


求めて下さる皆様の愛が嬉しくて…、


愛おしくて…





あ「…うっ…うっ…」





…これが神と心を通わせるということなのだろうか…。


瀬織津姫が実際に感じているのであろう、



これまでの人々への愛と感謝が、


水の流れのように、清らかに僕の心に流れ込んできて、僕も溢れる涙が止まらなくなっていった…。







瀬織津姫「…誤解をなさらないでください…。

 

私は決して『伝説の女神』などという、

 

大それたものではございません…。



ただもし…その言葉が私に許されるならば…、


私をそうさせて下さったのは…、


皆さんからのこうした『愛』の積み重ね…なのです…。



神の神威は、


人の愛によってこそ育まれます…。



私は時代を超えた多くの人々の愛によって生まれ、人々の愛によって育まれてきた存在なのです…





あ「うっ、うっ…」





瀬織津姫「…だからこそ、


私を無闇に神聖化なさらないでください…。


いつまでも私は、

 

貴方たち人とともにあります…。

 

 

貴方たち人が…私を育んでくれたのです…。



永い歴史をこれからも…、


共に歩んで参りましょう…。



お互いに支え合いながら…。


いつまでもお互いに愛し合いながら…」







…そう言うと、瀬織津姫は花のような、


優しく愛らしい笑顔をパッと咲かせて、



これまで自身を愛し守ってくれた、

 

すべての人々に届けるように言った。











瀬織津姫「…ありがとう…。

 

私は…貴方たち人間が大好きです…」











…瀬織津姫のその言葉とともに、

 

少しだけ雲がかっていた空が大きく晴れ渡り、

 

 

太陽が、『日本で最も早く日が昇る地』、

 

早池峰山頂を照らし出した。







ここに、

『瀬織津姫』という神に僕が抱いていた、

 

すべての謎が終わりを告げた。

 

 

 

 

人の歴史の影に翻弄されたと思っていた女神は、

 

 

その結果として、

 

数千年という時を越えて、

 

 

多くの人々に守られ愛される、

 

『伝説の女神』となった。





時に姿形を変えながら…。

 

時に名前すらも変えながら…。



『瀬織津姫』という女神は、

 

永い時代を人と共に歩んできた。





…しかしもしかしたら、

 

その無限に形を変えて歩んできたその歩みすらも、





『水』という無限に形を変えて存在する、

 

瀬織津姫が持つご神威が為せる技だったのかもしれない。



…それが真実かどうかは人間である僕には分からないけど、



一つだけ言えることは、



『瀬織津姫』という女神は、


今も現在進行形で人々に愛され、


そのご神威を高め続けている女神であるということ。





愛すれば愛するほどに、

 

そのご神威は高まり、



思えば思うほどに、

 

美しきこの女神は輝きを増していく。





奇跡的な人の歴史の積み重ねが育んだこの女神は、


今も自身を育んでくれた人に、感謝の気持ちを持っている。



そしてこれからも、

 

人と共に歩む未来を夢見ている。







役行者さんやおないさん始め、


先人たちが守り、

 

育んできた『瀬織津姫』という女神を、

 

僕らもまた大切に守り、受け継いでいくために。


 


過度な神聖化はせず、

 

あるべきものをあるべき形で知り、

 

 

その中でそれぞれがそれぞれの判断の中で、

 

先人たちが繋いでくれたバトンをしっかり受け継いで、

 

 

僕らもまたこの『時空を越えて愛された女神』を愛し、

 

その輝きを大切に、大切に育んでいこう。










…そして長きに渡る『瀬織津姫を巡る旅』が終わりを告げ、

 

次は僕が瀬織津姫との約束を果たす時…。

僕が身に付けていた、

 

隕石のネックレスが持統天皇の魂を解放した時と同じように、燃え上がるような熱を持った。

 

 

いよいよ瀬織津姫さんとニギハヤヒさんが

 

再会を果たす…。

 

 

 

 



…その時だった…。

あ「………何やねん





ス「『何やねん』とはなんじゃ!!

 

お前俺、俺、俺のこと忘れてるやろ!!」

あ「…何ですの、一体…。

 

これでニギハヤヒさんが登場したら、これ以上ないほど綺麗に終われそうやったのに…」





ス「このドアホが!!

 

お前には読者の皆様に対する気遣いがないのか!!

 

お前にはDIY精神が足りん

あ「家具作りか。


何で『DIY(Do it yourself)精神』やねん。

 

『ホスピタリティ(思いやり)精神』やろがぃ





ス「うるさいっ!!

 

そもそもや!!ここで瀬織津姫とニギハヤヒが、再会してもうたらどないなんねん!!

 

『これを見て瀬織津姫とニギハヤヒの二柱の神に会いたくなった人は、早池峰山頂へ』ってか!?

 

じゃあ足の悪い人はどうなる?お年を召した方はどうなる??





あ「いや、そりゃ確かにここまで来るのは、大変やけども(笑)

 

じゃあ、どうすんのよ(笑)」





ス「瀬織津姫とニギハヤヒの再会には、とっておきの場所があるやろがぃ。


『あそこ』や」





あ「…『あそこ』…?


って、あぁ!あそこか!!」





ス「おぅ、お前も多くの方々に支えてもらって、

 

この瀬織津姫を巡る旅を終えてんから。

 

最後ぐらい、これを見てくれている皆さんに恩返しをせぃ。

 

 

瀬織津姫とニギハヤヒの再会は、皆さんが会いに行ける、然るべき場所でやれ。

 

『会いにいけるアイドル』ならぬ、


『会いに行ける瀬織津姫とニギハヤヒ』や

あ「表現が軽い。


…すいません…瀬織津姫さん、大丈夫ですか…?」







瀬織津姫「…フフッ…。


私は構いませんよ…」

…瀬織津姫がみんなの愛によって育まれた神であるならば、



これを読んでくれている皆さんも、


瀬織津姫さんとニギハヤヒさんに『愛を届けることが出来る』ように、


その地を伝えることがこの旅に於ける、僕らの最後の役割らしい。





先人たちが繋いでくれた『瀬織津姫』という名の


女神のバトンを、僕もしっかりと受け継いで、

 

そして皆さんに繋いでいく。





そして、『瀬織津姫』という女神は永遠に、


色褪せることなくその輝きを増していく。


僕の中で、皆さんの中で。





これからも時代を越えて、


永遠に、輝き続けていく。